Home > ロフトワークの強さ > キーワード・コラム > お祭り騒ぎで終わらない!戦略的ツールとしてのスマートフォン対応
ロフトワークでは2011年10月12日、「今さら聞けない!?企業のスマートフォン対応」というテーマで無料セミナーを開催予定です。その事前座談会では、ロフトワークの君塚美香をモデレーターに、『スタイルシート・スタイルブック』『Web Designer 2.0』の著者であり、セミナーのゲストスピーカーを務める長谷川恭久氏と、ロフトワークのチーフプロデューサー藤原正平の二人が対談。
そもそも、すべての企業がこぞってスマートフォン対応を急ぐ必要があるのか?という原点に立ち返りつつ、スマートフォン対応において考えるべきことや重視すべきこと、運用を見据えた適切な体制づくり、よくありがちな勘違いまで、いずれも興味深い話が展開されました。中には、担当者にとって、耳の痛いような話も・・・。スマートフォン対応を迫られる企業は、ブームに踊らされるのではなく、今一度自社のビジネスを見つめ直してみる必要がありそうです。
-まずは基本的な質問からになりますが、企業にとって、スマートフォンサイトはどのような役割を担いつつあるのでしょう?
長谷川恭久氏(以下、長谷川): そもそも本当にスマートフォンユーザーが増えているのかどうか。そこを踏まえて議論すべきかもしれませんね。必要だから買う人たちばかりではなく、流されて買う人たちが増えているのも事実。ノリで変えちゃった人は、スマートフォンとのコミュニケーションに対して計画性がないので、フィーチャーフォンで築き上げられた関係がなくなっていることへの失望感が大きい。そうなると、フィーチャーフォンに戻りたくなる人もいるわけです。
一方で企業にも、ただ闇雲にスマートフォン対応を急いでいる状況が伺えます。戦略的ツールとしてスマートフォンサイトがなければ、おそらくそれは本当の意味での対応ではない。流行りだから作るというのは一番危険で、そこにビジネスとしてのプランニングや明確なゴールがなければ厳しいでしょう。これまでWebサイトを通じてどんな顧客とどんなコミュニケーションをしてきたか。まずはそこに立ち返り、その上でスマートフォンサイトを作るべきかどうかを考えるべきです。
-なんかやらなきゃいけないから、とりあえずやってみて、結果が出ないからやめるという話はよく耳にしますよね。制作側としてはどんなことを感じていますか?
藤原正平(以下、藤原): 確かに、ソーシャルメディアやスマートフォンといった領域に船出すると、新しいお金が転がり込んでくるイメージがあって、プランもないまま投資しようとする企業も見受けられます。特に、トップダウンで社長がやれと言うからやるというケース。でも実際は、スマートフォン対応して意味がある業種って、ある程度限られてくるんじゃないかと思います。たとえば飲食業だったら、お店の場所が探せるとか、お店に行った人がクーポンを提示できるとか、顧客とのコミュニケーションが売上に直結しますから、採算が見えれば投資もしやすいでしょう。
長谷川: ソーシャルメディアを活用することで顧客との接点が増やすことが出来ますが、ばら撒きツールのひとつとしてしか見ていないところでもう一歩踏み込めていないところがあります。結局ところカスタマーサービスがソーシャルメディアを最も活用するべきところで、生身の人と人とのコミュニケーションとして活用することで、今より効果のある使い方が出来るはずです。そのときにスマートフォンの対応は欠かせなくなるでしょうし、もう少し戦略的な意味でのスマートフォン対応ができると思います。
-では、いざスマートフォン対応しよう!と決断したとき、企業担当者が直面する課題といえば、たとえばどんなものでしょう?
藤原: どんなサイトを作るべきか考える際に、どんな顧客とどんなコミュニケーションをするべきか仮説を立てるわけですが、広報とマーケでは見方が違うんですね。マーケの人は日頃から試行錯誤に慣れているので、手法はいろいろ思いつく。でも、会社の活動をパッと広めることに長けている広報の人は、ターゲットがフォーカスされた瞬間、どうコミュニケーションすればいいかがわからない。それで、普段から付き合いのある広告代理店に「スマートフォン対応したいから、方法を提案してほしい」と、ざっくり投げてしまうわけです。
長谷川: だから結局お祭り系の企画書しか上がってこない。パッと盛り上げて、楽しかったよね、みたいなことができれば成功としてしまう。つまり、一本一本の細かいコミュニケーションに慣れていないという問題が一つ。もう一つは、フィードバックが返ってくることに慣れていないという問題です。今や、人と人との対話を一般の企業が当たり前にやらなければいけない時代です。必ずしもお祭り騒ぎが悪いとは言えないですが、それをやりつつ何ができるのか、顧客との対話が出来る体勢をつくっていく必要があります。
-ユーザーのコンテキストにどう踏み込んでいくかを考える、ということですね。それはリアルの世界での会話と一緒のような気がします。
- 一方で、構築面で留意すべきことも多いと思うのですが、PCサイトのスマートフォン対応を考える際のポイントを教えてください。
長谷川: 捨てる勇気ですね。PCサイトには、いろんな可能性に対応するための広さや深さがあります。すべての部署のために、コンテンツを乗せる場所を平等に用意することもできます。それが全部なくなるのがスマートフォンサイトです。コンテンツも、部署も、コンセプトも全部平等じゃなくなると思ったほうがいい。なぜなら、スクリーンサイズが圧倒的に小さいし、今後定額パケットがなくなるかもしれないという状況も考えると、余計に無駄なことができません。
- たとえば、あるサービスに関してスマートフォンサイトを作ろうというとき、PCサイトの一部を切り出すのではなく、まず「プライオリティはどこ?」というところから突き詰めたほうがよいということですか?
長谷川: そうです。今の構造はあくまでもPCサイト内で完結するように構造化されたものですから、まずはそこを崩して考えてみる、ということです。それから、もう一つ重要なのがコンテンツファーストという考え方です。よくありがちなのが、コンテンツは簡単につくれるという勘違い。パンフレットや雑誌広告など他媒体でコンテンツを作っているから簡単に出来るだろうと思って制作行程の後回しになることがあるコンテンツですが、実は最も時間がかかる部分です。
特に今の情報の流れを考えると、顧客とのコミュニケーションにおいて明確なプレゼンスを保つだけのコンテンツを作り、それを忘れ去られないように常に更新していくのは、非常に難しいことです。それには時間もかかるし人材も必要です。そういう意味で、コンテンツを先に考えるのは正しいことだし、とても重要な作業なのです。
- 最後にズバリ、お祭り騒ぎで終わらせないための成功の秘訣は?
長谷川: “細く、長く”運営していくことですね。何事もそうですが、続けないと効果は現れません。ですから、運営をどうするかも重要な問題です。スマートフォン上のコミュニケーションは、どこで、どんなデバイスで、どんな目的で、というユーザーのコンテキストの理解から始まります。したがって、マスで捉えるのではなく、個人個人に対して何が提供できるのか。それを考え、実践していかなければなりません。
そのためには本来、マーケターではなく、経験もありコミュニケーションの仕方を熟知しているカスタマーサービスの担当者がリーダーになるべきだと思います。それぐらいスマートフォンサイトは人に近いメディアであり、直のコミュニケーションが必要なのです。果たして、組織としてこうしたコミュニケーションに対応できるのかどうか。できないのであれば、わざわざスマートフォンサイトを作らずに、Twitterアカウントを取って、そこで練習を積むのもひとつの方法でしょう。
藤原: 組織という観点で言うと、先ほどのコンテンツファーストの話にもつながりますが、クライアント側に、企業が一貫してやってきたことや企業理念に基づいてコンテンツを作ったり考えたりする人がいないと続きません。実際に文章が書けなくてもいい。こういう人にしゃべらせて、こういうメッセージを出しましょうということを考えたり、そのために動けたりする人が必要です。あとは、新しい施策にチャレンジするときに必要な要件として、現場のリーダーに決裁権が与えられていることも重要になります。
長谷川: もう一点、スマートフォン対応は、テクノロジーやデバイスなど、これから新しく出てくるものもあり、不確定要素が多い中でやらなくてはいけません。ですから、答えがなくて当然。いかに柔軟に動き続けられるかもポイントになりそうです。
- なるほど。まだまだ発展途上にある中で、今何ができるのか、すべきなのか。多くの担当者が悩まれるのもわかりますね。10月12日のセミナーではそのあたりを踏まえて、まずは弊社の藤原から担当者が直面する課題を整理して解説、長谷川さんにはスマートフォン向けの新しいコミュニケーションデザインのあり方についてお話しいただき、最後に弊社のクリエイティブディレクターからスマートフォンサイト構築のフレームワークをご紹介する予定です。さまざまな悩みを抱える企業の担当者にとって、このセミナーが一歩でも前進するきっかけになればと願っています。
ブログ:could twitter:@yhassy
デザインやコンサルティングを通じてWebの仕事に携わる活動家。 アメリカの大学にてビジュアルコミュニケーションを専攻後、マルチメディア関連の制作会社に在籍。日本に帰国後、数々の制作会社や企業とコラボレーションを続け、現在はフリーで活動。
自身のブログとポッドキャストではWebとデザインをキーワードに情報発信をしているだけでなく、各地でWebに関するさまざまなトピックで講演を行ったり、多数の雑誌で執筆に携わる。著書に『スタイルシート スタイルブック』『Web Designer 2.0 進歩し続けるWebデザイナーの考え方 』など。
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