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要望は大河の一滴のごとく、すべてはそこから始まるわけです
さて、「ディレクションは面白い」をテーマにしたコラムの第2回目。前回は、手始めに1つの案件をディレクションしてゆく過程を「関門」として設定してみました。関門というのは、ディレクターからの目線ですが、この過程は「プロジェクト」をベースにクリエイティブ制作するためには、必ず行なわれるディレクションのアウトラインです。
もう一度、おさらいしておきますと、
1. 要望を聞き出す
2. 要件を整理する
3. 方法を考える
4. 方法を提案する
5. 制作する
6. 修正/ブラッシュアップする
7. 着地させる
今回は「1. 要望を聞き出す」に話題をしぼって考えましょう。「要望」は、大河(=成果物)へとつながる“はじめの一滴”となるものです。
では、実際どういう場面なのか考えてみます。例えば、webサイトで一番始めにいただく相談は以下のようなものです。
・お任せするのでとにかくかっこよくしてください。
・なんか古いんでリニューアルしたいんです。
・誰も更新する人がいないんで、リニューアルしてコンテンツを更新できる仕組みを入れたいんです。
・毎年春にあるイベントのページを作ってください。
・新サービスをはじめるに当たって紹介ページがほしいんです。
・社長がブログを作ってどんどん記事を書きたいと言っていて...
・とにかくサイト集客のために何か仕組みを考えてほしい。
・(SEOサービスのパートナーから)、とにかく仕様は考えるのえるので、デザインしてください。
など
予想通りというか、その要望にはさまざまな種類とレベルがあるものです。これらに加え、先方の社内事情、期末の予算消化、他プロモーションとの連携などの要素が組み合わせとなり、大きく曖昧な「Want」として宣告されます。それでは、ディレクターの仕事がスタートです。
個人的に、クライアント(先方)からの要望は、レベル分けするとだいたい4つタイプに分かれると考えています。
<要望の4タイプ>
a やりたいことが多く、現実から離れたところを目指すもの
b やりたいことは大体決まっているが、作るものが分からない
c やりたいこと、作りたいものも固まっており、あとは期間や予算などの調整で決まるもの
d 作ってほしいもが端的に決まっている
お分かりかと思いますが、a→c順に「要望が具体化している」状態です。議論が反れてしまうので、具体的にどのような状態を指すかは割愛します。ここでのポイントは、これらはプロジェクト発足のためのヒアリングに位置するということです。厳密には、プロジェクトとは「目的が設定された状態で発足する」ため、この段階はプロジェクトという型にセットするためのヒアリングに過ぎません。「要望を聞き出す」ことのゴールを「プロジェクトという型にセットすること」だと考えると分かりやすいと思います。
つまり、要望=プロジェクトの目的と考えたとき、それが明確にできてないと何が起こるか想像できと思います。簡単に言うと、出来上がったものとクライアントの欲していたものが違うものになるわけです。
さて、4つの要望のタイプに戻りましょう。aは確かに要望ですが、具体化が必要そうです。bは要望は再確認で問題なく、次に何を成果物とするかを確定して了解を得る必要があります。cは要望を現実的なプロジェクトにセットするために調整します。dはこの時点で聞き出す要望はほとんどなく、早速、プロジェクト発足となるでしょう。一般にディレクターが遭遇する率が高いのは、cではないかと思いますが、“b寄りのc”という場合も少なくないため、提案を交え像を固め、型にセットしていくことが多いと思います。
ここで少し具体例を交えてお伝えします。オンライン通販を行なっている会社から、以下のような要望をいただいたとしましょう。
「売り上げが悩んでいるから、ブログとかいろいろなサイトにリンクとか貼って、さらにコンテンツも充実させて、盛り上げてほしい。だけど予算は今期はあまりとれないから、スモールスタートではじめて、来期以降、2次開発として考えてればいいから」
あえて意地悪な例を書いているみたいに感じましたか? いいえ。このような形でお話をいただくことは、少なくありません。一見、要望はすべて聞き出せたと思うかもしれませんが、これでは、プロジェクトを発足させるための要件である「目的の設定」はできません。
「要望を整理する」というのは次回以降の話題ですので、今回は、「要望を聞き出す」という観点で上記を整理しましょう。
ここでのポイントは、
「“要望を聞き出す”とは、全部、場に出してもらうためにディレクターが話題を促すこと」
です。
プロジェクト発足の根幹である聞き出しの際に、聞き漏れがあるとそれ以降の提案や判断におのずとズレが生じてきます。例えば、まずはシンプルに目的をしぼることで明確化することを試みます。それができたら、世の中のwebサービスを例に出したりして具体像を共有していきます。まったく違うサービスやビジネスを引き合いに出しても、像合わせができるのであれば問題ありません。自分の持てる知識をフル稼働して、とにかく言葉を引き出します。そこまでできた段階で、次に予算や期間のこと、さらにwebであれば運用体制などについても突っ込んで聞きます。あくまで、すべてを聞き出すことをゴールとしてのヒアリングです。
先の例では、目的はいくつかに絞れます。
・目的1:売り上げをアップさせる
・目的2:SEOやSEMによりサイトのアクセスを増やす
・目的3:限られた期間と予算で行なう
といったものでしょうか。
ここでは3つに設定しましたが、これ以上、増やすと目的を失うことにもなるため、すべてを聞き出すといいながらも、ひとまず軸を設定します。理想は1つに絞ることですが、はじめから1つに絞ることで話題を引き出す機会をつぶすことがあります。軸の設定は慎重に行なうことが重要です。あとは、この3つに匹敵するほどの大事な要望を伝え忘れていないか、漏れがないように念を押して、フィニッシュを迎えます。
これらの行為は常に最適なコミュニケーションによって成立しますので、いきなり本題に入ることなく分かりやすい話題から徐々に核心にせまったり、クライアントがとにかく熱く語りたい場合、すべて出し切るまで話を聞くなど場面によって工夫することも重要です。
こうして、クライアントはすべてを出したことで、満足感を得るでしょうし、その後、プロジェクトを設計してゆくディレクターも判断が正確になるというメリットがあります。
最後に。要望を聞くことに関して持論があります。それは当事者である担当者がどんなものを描いているかを率直に聞くことです。つまり、会社として作りたいものに加え、担当者の想いがあり、それを確実に聞きとることです。ディレクションに楽しさを与える要因の1つに、“担当者の想いを形にする”というものがあると考えています。どんな些細なことでも、担当者の想いが形となったクリエイティブには輝きがあると私は感じるからです。
それでは、次回は「要件を整理」です。今回、紹介した「要望」を素に、プロジェクトを計画する重要なプロセスです。さらにディレクションの核心に迫っていく予定です。
部署・役職 : シニアディレクター
法政大学卒。大手出版社にて3年間、音楽関連雑誌の編集を行う。退社後、フランス、ドイツ、オランダを放浪。2004年ロフトワークにディレクターとして入社し、編集者時代の経験を活かしたビジネスマン向けのWebコンテンツの制作を中心に行う。複雑で大型化が進むSNS、CMSなどのディレクションを得意とする。
2010/02/08 シニアディレクター 滝澤 耕平
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