Home > ロフトワークの強さ > キーワード・コラム > CMSはこう選び、こう提案せよ!イマドキのCMSとの付き合い方 Vol.1 「進化を続けるCMS市場の現状」
Webによる情報発信の重要性が高まる中、これまでのマニュアル運用に限界を感じ、CMSを導入する企業が増えている。転機を迎えつつあるWeb制作の現場は、CMSの戦略的活用を見据え、どんな価値を提供できるのだろう。プロジェクトの成否を分けるポイントを中心に、“イマドキのCMSとの付き合い方”について考察してみたい。
この文章は株式会社エムディエヌコーポレーション発行の月刊「web creators」2009年12月号に掲載したものです。なお、この文章につきましては、株式会社エムディエヌコーポレーションの「MdN Interactive」でもごらんいただけます。
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*1:シックス・アパート株式会社が提供している「Movable Type」
ひと口に「CMS」といっても、指し示す範囲は意外に広い。一般ユーザーにまですっかり浸透したブログはもちろん、リアルタイムなコミュニケーションツールとして新たに台頭してきた「Twitter」もCMSの一種だ。つまり、Webページを構成するテキストや画像などのコンテンツ(Contents)を、レイアウト情報などと一緒にサーバ側で管理(Management)する仕組み(System)が「CMS」である。
現在のCMS市場には数多くのCMSツールが存在し、一見“より取り見取り”に見える。その勢力図に注目してみると、導入数として制作者にとって抜群の人気を誇るのが、ブログベースのアーキテクチャとして発展してきた「Movable Type」(以下、MT)だ*1。これを追い上げる形で、世界的にも支持を集めている「WordPress」が日本でも支持を拡大しつつある*2。MT、WordPressともにコストパフォーマンスが高く、工夫次第でさまざまなプロジェクトに活用でき、そして大勢の開発者の間で長年鍛えられたことによって高い柔軟性をもったすばらしいツールだ。
*2:最近世界的に人気が上がり、Movable Typeを追い上げる「WordPress」(ja.wordpress.org/)
一方で、最近の傾向として、CMSを「SaaS」(Software as a Service)として提供する企業や、独自に開発したCMSツールを製品化する企業も増えてきている。SaaS特有の低い導入コストで提供されるものもあり、導入の敷居が低いながらも企業によるサポートを得られるメリットがある。また、「XOOPS」や「Drupal」など、開発コミュニティベースのオープンソースCMSの人気も顕在だ。ただ、豊富な機能や自由にコードを活用できるなど、商用CMSにはない魅力がある半面、サポートやセキュリティに対する保証がないこと、導入側にも高いリテラシーを求められるなどほかのCMSツール以上に慎重さが要求される。技術力はもちろんのこと、リスク回避のノウハウをクライアント自身ももち合わせなければ、せっかくのメリットを相殺してしまいかねない。
また、大企業への導入が前提となっている「エンタープライズCMS」と呼ばれる製品群、そしてその下の中堅企業や商用で汎用的に使われる「ミッドレンジCMS」と呼ばれている製品群は「TeamSite」、「NOREN」、「WebRelease」など、多数の実績と十分以上の機能を誇る製品群が並んでいる。最近では「HeartCore」、「OracleECM」、「Tridion」など特徴をもった新しいソリューションも日本に参入しているが、多くは海外で十分に実績を積み、どの製品も成熟し十分な機能をもっている。
エンタープライズCMSは高価で運用にも高いリテラシーが必要とされるが、完成度が高く、XMLなどの最新技術にも対応しており、数千~数万ページに及ぶ大規模サイトの構築および運用に力を発揮する。「WebRelease」に代表されるミッドレンジCMSはコストパフォーマンスと機能のバランスが魅力で、企業の多くの用途を満たすことができるだろう。
同じエンタープライズCMSでもその設計思想の違いから、UIや構築手法、使い勝手はかなり異なり特性や適正がある。
Web制作の現場では、MTやオープンソースCMSをこよなく愛する開発者も多く「CMSはMTがあれば十分」と言ってはばからない人もいるが、どれが優れたCMSかはプロジェクトの相性が決めることだ。それを知らずにひとつのCMSツールですべてのニーズを満たそうとすれば、利用をするユーザーにしわ寄せが来ることもあるし、期待された結果を出すのが難しくなることもあるだろう。食わず嫌いはもったいない、機会があれば別のCMSツールを試してみるのも悪くない。そう考えつつ、それぞれのCMSツールの得手不得手を把握し、柔軟な使い分けができるようになれば、ビジネスチャンスも広がるのではないだろうか。
最近ではマーケティング活動にTwitterを利用する企業も登場している。そもそも企業がCMSを導入する目的には、増え続ける運用負荷の軽減をはじめ、情報発信力の強化、統一的なデザイン管理、さらにはSEO対策への期待など、いろいろある。長年を経て、いつの間にかWebサイトは数百~数千ページ規模へと膨らみ、やがて手作業での運用に限界を感じた企業は、そこに根本的な解決策、すなわちCMSが必要であることに気づきつつある。
『インターネット白書2009』(株式会社インプレスR&D刊)によれば、「費用対効果を期待して今後とり組みたいWebサイトのための技術やサービス」として、「ネット上の露出アップ」や、「ユーザビリティやアクセシビリティ、Webデザインの向上」、「コンテンツ増強のためのデータベース構築」が上位を占めている*3。7位に「CMSの導入」が入っているが、上位3つの問題はもちろん、それ以降の「Webサイト活用の際の障害」には、「専任の人材がいない(不足している)」、「コストの制約が厳しい」、「サーバ運用のノウハウがない」、「Webサイトの効果がわかりにくい」などの問題、すべてがCMSの導入と関係し、CMS導入によって何らか解決をできる可能性のある問題だ。重要なことはCMS導入は手段であって目的にするべきではないということである。サイトにどんな問題があり、それを解決するためにCMSを活用するのだ。繰り返すがCMS導入は手段であって目的ではない*4。
*3:費用対効果を期待して今後とり組みたいWebサイトのための技術やサービス(2009年)。(株式会社インプレスR&D刊『インターネット白書2009』P.254のグラフより、2009年データのみ掲載)
*4:Webサイト活用の際の障害(2009年)。(株式会社インプレスR&D刊『インターネット白書2009』P.254のグラフより、2009年のデータのみ掲載)
CMSツールの大きな強みのひとつが、XHTMLの知識やプログラミングのスキルを必要とせず、だれにでも自由に情報発信できること。これはユーザーにしてみれば歓迎すべきことであるが、一方でWebサイトの運用を仕事で行ってきているデザイナーや制作会社の方は、CMSの導入に不安になるかもしれない。
しかし、恐れることはない。なぜなら、Twitterを見ても明らかなように、Webの進化が止まることはないからである。Webが進化を続ける限り、CMSはつねにその対応を迫られ企業のマーケティング活動がWebセントリック(Web中心)にシフトすればするほど、その活用のあり方が問われることになる。
*5:CMS導入の状況[従業員規模別](2009年)。(株式会社インプレスR&D刊『インターネット白書2009』P.253のグラフより、2009年のデータのみ掲載)
CMSを導入するとWebのプロフェッショナルの役割がなくなるわけではない。むしろ、CMSをどう活用し、より高い目的を実現していくかはわれわれプロフェッショナルの今後大きなテーマであり役割だ。ますます市場との対話が重視されるこの時代、Web制作の現場はCMSから逃げることなく、逆にCMSの“パブリッシングプラットフォーム”を把握し、武器としていく必要がある。何より企業は長期的な視点でクライアントを支援してくれる戦略的なパートナーをますます求めている。
また、『インターネット白書2009』によれば、CMSを導入済みか導入予定の企業は全体の約25%。CMSの未導入企業はまだまだ多い*5。CMS導入によって仕事が減ると考えるより、ビジネスチャンスやステップアップのひとつと考えることもできるのではないだろうか。
部署・役職 : 代表取締役社長
ロフトワークの共同創業者、代表取締役社長。2000年、クリエイティブの新しい形の流通を目指しクリエイターコミュニティ「loftwork.com」をスタートし、株式会社ロフトワークを設立。自身もクリエイティブディレクターとして活躍してきた経験を活かし、「loftwork.com」を日本最大級のクリエイターコミュニティに成長させる。近年は、Webプラットフォームの有効活用をテーマとしたセミナー・講演、執筆活動を精力的に行い、企業経営とWebのシナジーを高める提案を積極的に行っている。
1971年米国サンディエゴ生まれ。
慶応大学総合政策学部(SFC)を卒業後、JapanTimes社が設立したFMラジオ局「InterFM」(FMインターウェーブ株式会社)立ち上げに参画。クリエイティブ業務を経た後、同局最初のクリエイティブディレクターへ就任。1997年渡米。School of Visual Arts Digital Arts専攻を経て、NYでデザイナーとして活動。2000年にロフトワークを起業。
Twitter:@suwaws
2010/02/08 シニアディレクター 滝澤 耕平
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