Home > ロフトワークの強さ > キーワード・コラム > EC事業を成功に導くための秘訣とは ルグラン×ロフトワークの両トップが徹底討論
国内の全商取引のうち、13.7%を占めるまで成長したEC(経済産業省、2009年時点)。インターネットを通じて商品を購入する消費者は年々増えています。企業にとって、ECは店舗と同等に重要な販売経路になり、ECサイトを立ち上げる企業も、業種・規模を問わず増加傾向です。しかし、ECサイトは、ただ開設しただけでは成功しません。
集客するための広告・宣伝や、アクセスユーザーを購入に結びつけるための仕掛け、リピーターになってもらうための工夫など、さまざまな取り組みが必要です。ECサイトを成功させるために本当に必要なことは何か——。市場が急伸し、ECサイトも増加している今だからこそ、競合他社と差異化を図るために、見つめ直さなければならないテーマです。
ロフトワークは、この重要なテーマについて解説する「ECセミナー~プロが語るEC全体戦略と大手アパレル2社の成功秘話」を6月17日に主催します。それに先立ち、SEMの有力コンサルティング会社であるルグランの代表取締役共同CEOで、セミナーにも登壇する泉浩人氏と、ロフトワークの代表取締役である諏訪光洋による対談を敢行。ECサイトの今と今後、そして成功するための秘訣について意見を交わしました。(モデレーター:君塚美香)
——まずは、ECの現状について、お二人はどのような見解をお持ちか、教えてください。
泉浩人氏(以下、泉): 物販しているすべての企業が、ECの必要性をすごく感じているというわけではありませんが、「(ECを)やらなければいけない」という機運は確実に高まっています。最近では、現場の社員だけでなく、経営層がECをとても重要視し始めたように思います。ECが浸透し、経営陣も決算説明会でアナリストから「御社のEC戦略について聞かせてください」と質問されることも増えたようで、「ECを軽視できない」と考え始めた経営者が増えてきたんだと思います。
諏訪光洋(以下、諏訪):これまでECサイトを立ち上げる企業は、わりと規模が小さいというか、セールスパワーが弱い企業が多かったと思います。販路が限られたり、営業リソースがなかったりする企業が、ECで補っていた。それが、2010年頃から変わってきた。販売力があり、リアルな店舗を複数設けている大手企業も、ECに取り組み始めました。
ECがようやく当たり前になって、自らECを利用してその便利さを知った人が増えているのだと思います。そのなかには、ECを利用して、自社のビジネスにも生かそうと考え始めた経営者が多くいるのかもしれません。
泉:確かにそうですね。我々はECに入り込み過ぎているので、インターネットで商品を購入することは当然のように思ってしまうのですけど、「ネットでモノが売れるのか?」と懐疑的な人もまだ多い。そんな疑いが薄まっているのかもしれません。
諏訪:一方で、消費者は、パソコンでECを楽しむだけでなく、モバイル機器を使って商品を購入するケースも増えてきました。ある調査会社が発表した資料によると、直近半年間で、モバイルECサイトで商品を購入した人は、41.6%だったとのことです。モバイルECサイトの利用経験者は54.4%というデータもあります。別の数値では、モバイルECサイトを活用し始めた時期が直近1年以内という人が50%を超えています。急速に立ち上がったと言っていいでしょう。モバイルネットワークは、10年に比べて15年には25倍に増えるという予測データもあり、今後はモバイルECも急伸するはず。ECはますます必要不可欠な存在になるでしょうね。
——EC市場は長期的にみて有望ですが、成功したECサイトもあれば失敗した事例もあります。企業がECサイトを立ち上げる時に、考えなければならないことは何だと思いますか?
泉:私のパソコンのデスクトップには、実はECの事業計画書を書くためのテンプレートファイルがあります。これをもとに顧客と打ち合わせすると、非常に話が早い。つまり、ECサイトを立ち上げる企業は、開設する時と運用段階でどの程度の投資が必要で、どのように売り上げを積んでいくか、という事業計画を描ききれていないケースが多いんです。
「ECサイトを作ったら終わり。それがゴール」になりがちというか……。作った後に商品を販売するための集客を考えていないECオーナーは結構います。だから、私は顧客とともに経営の視点に立って、一緒に事業計画を立てています。その時にその事業計画ファイルを活用しています。
店舗を構えることと、ECサイトを立ち上げることは、リアルかバーチャルかの違いはありますが、同じことです。店舗の場合は、どの程度の建設費用がかかって、商品を売るために何人の店員が必要で、人を集めるためにこんな宣伝が必須。結果、いくらの投資が必要になると、当たり前のように考えます。
ECサイトも同じなのですが、これがそうはいかない。開設後、集客のための施策を何も実行しない企業もいます。店舗でのビジネスに数千万円は投資できるのに、ECには数百万円でも二の足を踏むわけです。
株式会社ルグラン 代表取締役共同CEO 泉浩人氏
諏訪:リアルとバーチャルのギャップは確かに私も感じます。ECサイトを作り運用するために必要な投資としては、戦略策定、サイト制作、運営費用、システム投資、フルフィルメント(ECにおいて決済から商品の発送に至る一連の業務)、リスティング広告など、多岐に渡ります。それぞれの金額は大きくなくても、合計したてみると、かなりの金額になり、そこでなかなか理解が得られないことが多いようです。
泉:普及・啓蒙活動がもっと必要なのかもしれませんが、EC事業に必要な投資の目安というか、相場がないからEC事業を立ち上げる企業も、なかなか投資できない悩みがあるとは思います。
目標を達成するためには、平均の顧客単価はいくらで、毎月何人の新規ユーザーを獲得し、そのうち何人にリピーターになってもらい、どのような頻度で追加購入してもらえるか。そのための施策は何かを描く。そして、大切なことは、実行するためにはいくらの投資が必要かを社内に理解してもらうことです。ROI(投資対効果)をしっかりと出すことが重要です。
——EC事業を展開する人は、それまで営業企画や営業推進部の担当者で、必ずしもECに精通していないケースもあります。チーム作りや最適な事業の進め方をどのように考えていますか?
泉:“目利きができる人”を、チーム内に取り込むことが必要だと思います。日本人は、外のナレッジを社内に入れることを嫌うと言いますが、EC事業をやったことがない社内のスタッフだけでやろうとすれば、乱暴な言い方をすると、「2回は失敗してもいい」くらいの気概をもってやらないとダメかもしれません。
諏訪:ECサイトを取り巻く環境は劇的に変化し、それは今後も変わらないでしょう。たとえば、今で言えばソーシャルメディアとの連携があるでしょうし、今後はモバイルをどうするかというテーマが出てくるはずです。こうした最新の動向をウォッチし、何が自社にとって適しているかを見定めるのは非常に時間がかかります。「これ!」というカリキュラムもないから、学ぶ方法も手探りになる。そうなると、自社内でやるには、私も限界があると思います。
EC事業の担当者も経営陣も、長期戦を覚悟することです。3年くらいの長い目でみて、事業計画を描くことが重要だと思います。3年続けると、ある程度のナレッジがたまってきて、社内にも理解され運用チームを組織化できることなどもありますから。
泉:まずは、“スモールサクセス”を地道に積み上げて、経営陣に「もっと伸ばすためには何が必要なのか?」と言わせることも必要。そうなれば、「待ってました」とばかりに、「売り上げをこれだけ伸ばすには、これだけの投資が必要です」という話ができ、事業を進めやすくなるはずです。あとは、パートナーとなるウェブ制作会社やウェブコンサルティング企業との信頼関係をどの程度築けるかに尽きると思います。
諏訪:ロフトワークが昨年のECの立ち上げからご支援しているレナウンさんも、最初は手探りで、社内の理解を得られなかった部分が少なからずあったのかな、と思っています。でも、EC事業を担当するレナウンの斉藤さん(セミナーでも登壇予定)は、「色々試したいことがある」といってくれていますし、今では各事業部の方々がEC事業を真剣に活用したいと思い始め、EC事業の担当者に「ECで売り上げを上げるためにはどうしたらいいか」という相談が出てくるようになったと聞いています。社内では事業部の枠を超えて、横断的なプロジェクトも動き出しています。我々も1つの会社を作るくらいの気持ちでやったので、信頼関係も築けたのかなと思っております。
泉:すばらしい傾向ですよね。あとは、諏訪さんも先ほどお話されていましたが、EC事業を取り巻く環境は、今後も日進月歩で進化し、正直に言えば、今後どうなるか我々も分からない部分があります。ただ、新しいものを躊躇することなくどんどん取り込む、「試してみる」という気持ちも大切だと思います。
——セミナーでは、レナウンさんに立ち上げから1年の実体験を素直に語って頂くとともに、泉さんにはSEMの適切な活用方法、諏訪さんには短期的なコンバージョンと長期エンゲージメントについて、具体的な事例や数値を交えて語ってもらいます。このほか、大手アパレルのリンク・セオリー・ジャパン「PLST」ブランドのEC戦略などもご紹介し、EC事業の成功の秘訣を深堀していきたいと思います。ありがとうございました。
部署・役職 : マーケティング
茨城大学理学部卒業後、ソフトウェアハウスにてSE、SIの経験を積む。2003年に現KDDI ウェブコミュニケーションズに入社し、ゼネラルマネージャーとして20名のマーケティングチームを統括。現在は、ロフトワークマーケティングdivにて、これまでの多岐にわたる職種経験を活かし、パートナーとのアライアンス業務のほか、BtoC案件のプランニングやプロデュースなどゼネラリストとして活動中。
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