Home > ロフトワークの強さ > キーワード・コラム > 大規模プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメント 「コミュニケーション計画」がプロジェクトの成否を決める!
ビジネスにおけるWebの重要度が高まるにつれ、Webサイト開発のプロジェクトはいわゆる「Webサイト」だけの制作にとどまらず、その周辺領域(経営戦略、、)を巻き込んで近年ますます大規模化しています。
そんな中、ロフトワークでは、Web制作の業界内でもいち早くプロジェクトマネジメントの考え方に着目し、その世界標準の知識体系”PMBOK”(Project Management Body of Knowledge)を実制作の現場に積極的にとりいれてきました。
今回は主に中~大規模(数百~数千万円規模)のWebサイト開発におけるプロジェクトマネジメントのポイントの中でも特に重要な「コミュニケーション計画」について、私なりに解説してみたいと思います。
クライアントや制作チーム、第三者といった多数のステークホルダーと「効率的」かつ「確実」にコミュニケーションをとっていくための「コミュニケーション計画」をいかに立てるかということが、ステークホルダーが多くなればなるほど重要になってきます。
コミュニケーション計画の設計が甘かったがためにコミュニケーションロスが発生し、プロジェクト全体の進行に影響を及ぼすということが少なくありません。あらかじめ設計しておくことで防げる問題は防いでおくにこしたことはないでしょう。
なお、今回のポイントはコミュニケーションの「取り方」ではありません。コミュニケーションの取り方は人それぞれです。話術に長けた人、淡々と物事を取り決めていく人、それこそプロジェクトマネージャー自身の個性が発揮される部分でしょう。
しかしどんなにコミュニケーションの取り方に長けた人であっても、その長所が効果的に発揮できないと意味がありません。今回は、その個性を最大限発揮するために、使用するツールや枠組みをどのように設計していくか、というところに絞ってお話をしていきたいと思います。
そう、コミュニケーションにも「設計」が必要なのです。
コミュニケーション計画を立てていく際にまず必要なのは、そのプロジェクトの中でどのようなツールが使用できるかを把握することでしょう。ツールには大きく以下のようなものがあげられます。あえて述べるまでもない項目もありますが、整理のためにそれぞれの特徴とともに記します。 ※「□」メリット、「■」デメリット
□ 直接顔をあわせて話ができるので、細かいニュアンスを把握しやすい
□ ブレスト、議論、交渉に向いている
□ 心理的に「きちんとコミュニケーションがとれている」という実感・安心感を得やすい
■ 移動も含め、必要以上に長時間になることが多い
□ 相手の声を聞くことができるので、感触を把握しやすい
□ 簡単な連絡、相談、交渉に向いている
□ 心理的に「きちんとコミュニケーションがとれている」という実感・安心感を得やすい
■ 電話だけでは、後々問題が起こった際に「言った/言わない」の議論になりやすい
□ 一度に多数の人と情報を共有することができる
□ 重要な連絡、相談、交渉に向いている
□ 履歴が文章で残るため、後々の誤解を生みにくい
■ ニュアンスや雰囲気を伝えづらい
■ 話題が多い場合、管理が煩雑になる/放置される可能性がある
□ 図や表など視覚的に情報を伝えることができる
□ 提案などに向いている
■ バージョン管理が煩雑になる
□ 一度に多数の人と情報を共有することができる
□ デザインやドキュメントなどの確認、ステータス把握などに向いている
□ 情報の一元管理ができる
■ ステークホルダーのリテラシーを考慮する必要がある
■ ステークホルダーのセキュリティポリシーなどによっては利用が制限される場合がある
以上、ざっと特徴をまとめましたが、ではこれらの特徴を把握した上で、 次にそれをどのように使用していくかを設計考えていきます。
コミュニケーション計画を考える際には、最低でも主に以下の視点から考えることが必要です。
・フェーズ(タイミング/頻度) ・内容 ・ステークホルダーの特性
以下のようなプロジェクトの場合を例に、具体的に気をつけるポイントを考えてみます。
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▼概要
約6ヶ月間の新規Webサイト制作のプロジェクト。
▼クライアント
窓口の担当者が1名。その他に各事業部門担当者が計10名。
各担当者のプロジェクトへの参加意識は高い。
▼プロジェクトフェーズ
1.要件定義フェーズ
2.設計フェーズ
3.実装フェーズ
4.終結フェーズ
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まず要件定義フェーズでは、要件をつめていくことはもちろんですが、特に新規プロジェクトの場合、ステークホルダー間での信頼関係の構築を行う大事な期間でもあります。
従って、この期間中は「ミーティング」をメインにコミュニケーションを設計するのが効果的です。週ごとの「定例会」を設定するなどの対応が必要な時期になります。
このフェーズで有効なコミュニケーションツール
- 定例会(隔週 ○曜日 ○時から1時間程度)
- メーリングリスト(情報共有用)
- オンラインスペース(ドキュメント共有用)
次の設計フェーズでは、設計したもの(ワイヤーフレームや仕様書など)に対して「いかに承認をもらうか」という承認プロセスが重要になってきます。
「承認者は誰なのか」「クライアント社内での承認プロセスはどのようになっているのか」を確認しながらあらかじめ「プロジェクト内での承認プロセス」を明確化しておきましょう。
例えば上記のプロジェクトの場合、直接やり取りをするステークホルダーはみな担当者レベルなので、承認の際にはさらにその上長がいるはずです。その存在を認識しておくことで、「最終的に承認をとるべき相手」が明確になりますので、より承認をとりやすい提案を行うことができますし、あらかじめその期間をスケジュールに反映させておくこともできます。
また、話題がより詳細に移っていくことになりますので、ステークホルダー全員が集まってのミーティングの開催頻度は下げ、分科会のようなミーティングの開催頻度を上げることが必要になってきます。
ただしその分科会での決定事項は、そこに出席していないメンバーとも必ず共有できる手段を設けておくことが必要です。共有の手段はさまざまですが、このケースの場合はクライアントのプロジェクトへの参加意識が高いという点から、メーリングリストを使用するのがよいかもしれません。
もしメーリングリストでは見逃されて埋もれる可能性が高いのであれば、ドキュメント共有用のオンラインスペースなどを別途用意して、毎回そこを見てもらうようにするという方法でもよいかもしれません。
このフェーズで有効なコミュニケーションツール
- 定例会(隔週 ○曜日 ○時から1時間程度)
- デザイン分科会(毎週 ○曜日 ○時から1.5時間程度)
- システム分科会(毎週 ○曜日 ○時から1時間程度)
- メーリングリスト(情報共有用)
- オンラインスペース(ドキュメント共有用)
続いて実装フェーズですが、ここで重要になってくるのは「変更点の共有方法」です。設計フェーズで決めたことが実装フェーズになって変更になるということは、プロジェクトを進めていく上でよくあることだと思います。
変更が入ること自体は悪いことではありません。その変更がそのプロジェクトをよりよい成功に導くのであれば、むしろ積極的に変更をしていくべきでしょう。
ただ、とはいえなんでもすべて変更していけばよいというものでもありません。変更要望が発生した際には以下のフローが必ず必要です。
○ 変更要望の受理
↓
○ 変更を適用した際のインパクト分析(工数/技術的な制約など)
↓
○ 変更要望を容れるべきか否かの判定
↓
○【OKの場合】変更の適用/実行
●【NGの場合】変更要望の差し戻し
また上記には、どのようなツールを使用してどのようなフローで行うかをあらかじめ設定しておきステークホルダー間で認識をそろえてく必要があります。
ロフトワークでは通常、その変更要望が一覧でき、しかもその要望への対応のステータス管理ができるようなオンラインスペースを使用するようにしています。エクセルなどで管理していくことも可能ですが、バージョン管理やステータス管理が煩雑になるため、一元管理できる方法を使用した方が情報の共有はしやすいと思います。
このフェーズで有効なコミュニケーションツール
- 定例会(隔週 ○曜日 ○時から1時間程度)
- メーリングリスト(情報共有用)
- オンラインスペース(変更管理用/ドキュメント共有用)
※オンラインスペースについては、諏訪のコラム「情報同期の重要性」で詳しく解説しています。
最後に終結フェーズです。ここでは「終結」させるためのフローを設計しておきましょう。
納品成果物として必要なドキュメントの準備とその納品方法、残タスクがないかどうかの確認方法とステークホルダー間でのその共有方法を決めることが必要です。
このフェーズで有効なコミュニケーションツール
- オンラインスペース(変更管理用/残タスク管理用)
- 納品報告用ミーティング
- 納品成果物の送付
なお、このようにして立てたコミュニケーション計画は、必ずアウトプットとしてステークホルダー間で共有しましょう。
ちなみにロフトワークでは、プロジェクト発足時に作成する「プロジェクトマネジメント計画書」の中でコミュニケーション計画を定義し、ステークホルダー間で共有するようにしています。
コミュニケーション計画については、途中で変更が入ってももちろんかまいませんし、むしろそのときそのときの状況にあわせて柔軟に設計を変えていくべき点でもあります。
ただしその場合にはかならずコミュニケーション計画を規定したドキュメントをアップデートしそれをステークホルダー間で共有することが必要です。
今回ご説明したコミュニケーション計画はあくまで例にすぎません。実際はもっと複雑な要因が絡んでくる場合もあるでしょうし、一度決めたとおりにそのまま進むこともめったにありません。ただ、コミュニケーションにも計画/設計が必要なのだということを意識してプロジェクトを進め、それをドキュメント化して共有することでその後のコミュニケーションロスを減らせる、ということはぜひ覚えておいていただければと思います。
部署・役職 : シニアディレクター
京都大学卒業後、大手出版社を経て2007年にロフトワーク入社。主に中規模から大規模のCMSサイトの構築や、NECのビジネスパーソン向けポータルであるWisdomの記事の運用を担当。さらにアバターや、mixi年賀状などのコンテンツも担当するなど幅広いジャンルのクリエイティブを手がける。
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