東京地図出版株式会社では、WebRelease 2を使って、テンプレート開発コストを最小限に抑えた多言語対応サイト「Japan-i」を構築しました。同時にモバイルサイトも立ち上げたというこのプロジェクト。1言語につき1,000ページ以上にも及ぶという膨大なコンテンツを、短期間でどう取り込んだのか。多言語化に伴う課題への対応について、ご担当者に伺いました。
「ミリオンマップ」でお馴染みの東京地図出版は、1957年の創業以来50年以上にわたり、地図書籍の専門出版社として歩んできました。同社の歴史とともに蓄積されてきた地図データベースを基盤とする一方で、紙媒体を主体とした地図専門出版社から脱皮し、新たに情報コンテンツ企業への転換を図るためのチャレンジもスタートしています。その第一弾となるのが、外国人をターゲットとした情報サイト「Japan-i」(ジャパンアイ)です。
Japan-iは、日本に興味を持つ外国人や、訪日予定のある外国人、あるいは日本在住の外国人に向けて、日本に関する各種情報を発信するサイト。英語、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語、日本語の5ヵ国語に対応し、観光情報はもちろん、移動に便利な交通情報や地図、日本の文化や習慣への理解を深めてもらうためのコンテンツなどが豊富に提供されます。圧倒的な情報量を誇るだけでなく、情報の質および鮮度の高さも大きな魅力です。
また、同社にとってJapan-iの立ち上げは、新たな収益モデルを確立するための未知なる挑戦でもありました。経営トップの意向を受けて、白紙の状態から出発した新規事業です。“満を持して”と言っても過言ではありません。プロジェクトの始動にあたっては、旅行ビジネスやコンテンツ市場の現状を踏まえ、ターゲットの選定や事業の発展性についても十分な検討が重ねられました。外国人向けサイトという結論は、海外からの旅行者数が急増していることや、新規参入の余地などから導き出されたものです。
社内での議論を経てJapan-iのコンセプトやコンテンツの枠組みが固まったところで、いくつかの制作会社に相談を持ちかけました。特に制作会社の実力を問われたのが、CMS構築の領域です。構築後も自社内で運用をまわせる仕組みとして、当初からCMSには注目していたのです。同社編集部のご担当者は、複数の制作会社の中からロフトワークを選んだ理由について、次のように語ります。
「他社は自社開発ベースの提案が多く、WebRelease 2を使ったサイト構築を提案してきたのはロフトワークだけでした。実際に製品の説明を聞いて、使いやすそうだなという印象がありましたし、商用CMSのほうが安心だろうとの判断もありました。また、営業の方の引き込まれるような話しぶりにも惹かれました。これが案外大きな決め手になったように思います」。
さらに、ロフトワークとの出会いは偶然だった、とご担当者は続けます。
「たまたま雑誌のパートナー一覧で見つけたのがきっかけですね。最後にお声がけした制作会社だったのですが、どこよりも時間がない中でヒアリングを行い、たった1回のタイミンングで、こちらの考えをきちんと汲み取った完成度の高い提案をいただけました。このコミュニケーション能力の高さがポイントになりました」。
同社の決断を促すことになった「話が通じる制作会社」との評価は、その後のプロジェクトを通じてさらに確かなものとなっていきます。
何よりJapan-i構築の肝となったのは、膨大なページの生成作業です。たとえば「Hot Springs」というカテゴリー1つをとっても、地域別、各温泉別に大量のページを生成する必要があります。Japan-iのオープンに向けて編集部が準備したコンテンツは、1言語につき1,000ページを超えるというから驚きです。同じページを5ヵ国語分用意することを考えると、原稿の執筆から翻訳、ネイティブチェックなど、一連のコンテンツ制作に費やした同社の労力は測り知れません。
一方で、膨大な情報を利用者の視点で見やすく、探しやすく構成すると同時に、運用面での容易性と柔軟性を両立するための工夫も不可欠でした。この点では、仕様の策定から、デザイン開発、コーディング、テンプレート開発までを担当したロフトワークが力を発揮。多言語対応のCMSサイト構築の経験をベースに、さまざまなアドバイスを行いました。
▲ シンプルかつ柔軟性を追求したテンプレート
「やりたいことが出てくるたびに階層がどんどん深くなり、併せてテンプレートの数も増えていくことになります。予算的なことを考えると、テンプレートを最小限に抑えなくてはいけない。でも、今後の展開を考えると、いろんな見せ方に対応できるよう、ある程度の自由度も確保しておきたい。このバランスを保つためにどうすればよいかという点で、ずいぶんロフトワークの力をお借りしました」(ご担当者)。
工夫したポイントについて、ロフトワークのディレクターはこう振り返ります。
「多言語化ということで、複雑になりがちな入力の構成などをシンプルに1テンプレートにまとめ、管理者が運用しやすい構造を意識しました。また、今後言語が追加される場合を考慮し、柔軟な構造を目指しました。お客様の熱意にお応えすべくあらゆる可能性を模索し、多様なページを作成できるマルチテンプレートを実現できたことは、大きな成果と言えます」。
いよいよテンプレートが完成し、コンテンツの登録作業を進める中で、同社はWebRelease 2の使い勝手の良さについても実感。「特にメリットを感じたのは、CSV形式で一括して情報を取り込める点。複数ページを一度に生成できて便利です。それから、1種類のテンプレートから多言語化できます。ページのコピー機能を使えば、体裁を変えることなく、テキストを差し替えるだけで済みます」(ご担当者)。
▲ モバイルサイトもWebRelease 2で同時に構築
また、今回のプロジェクトでは、英語のみ、かつ東京の情報に限定したモバイルサイト「Japan-i.jp mobile」も同時に構築。こちらもWebRelease 2を使って、100ページ以上に及ぶページを1種類のテンプレートから生成することで、1ヵ月という短期間で完成させました。このサイトは、ハンディサイズの英語・日本語併記バイリンガルマップ「Bilingual Atlas of TOKYO」と連動しており、巻末の「東京ガイド」に掲載されたQRコードからアクセスできるようになっています。
ロフトワークはモバイルサイトの構築に関しても豊富な実績とノウハウを持ち合わせており、PC向けサイトの制作とモバイルサイトの制作を切り分ける必要がなかったことは、プロジェクトの工数を大きく左右する重要なポイントだったと言えるでしょう。
こうして2008年4月の公開に向けて着々と準備を進めていたJapan-iですが、完成を前に社内で新たな意見が浮上し、グローバルメニューの変更が生じるというハプニングもありました。それでも、マイルストーンごとにミーティングを設定し、密な意思疎通を心がけることで、プロジェクト全体を通じて大きな混乱もなく進行。柱となるコンテンツを登録し終えた今も、継続的に情報を追加しており、サイトは徐々に賑やかさを増しています。
▲ 今後の新たな展開にも期待がかかるJapan-i
プロジェクトの成功要因について、ご担当者はロフトワークの貢献を挙げています。
「私たちがCMSについての素人であるということを踏まえて適切に対応してくれただけでなく、テンプレート開発においても、やってはいけないこと、やると不便なことまでをはっきりと指摘してくれました。おかげで、半端ではない膨大な情報量にも関わらず、最後までやり遂げることができたのだと思います。デザインについても大変気に入っています。二転三転して結局最初にご提案いただいたものに決まったという経緯を見ても、ロフトワークの提案力がうかがえます」。
さらに、「締切が絶対となった場合に、スケジュールを厳守しつつ、その中で最大限の成果を導き出してくれます。また、こちらから疑問を投げかけると、単に“できる”、“できない”といった答えが返ってくるだけではなく、必ずベストな解決策や代替案が出てきます。これが非常にうれしいですね」とご担当者は続けます。
2009年2月に満を持してグランドオープンを迎えたJapan-iには、日本人でも思わず興味をそそられる情報が満載。今後は、紙媒体との相乗効果を狙ったアプローチや、日本の商品を販売するECサイトの構築など、Japan-iを核にした新たな展開についても模索が始まっています。正しい日本の姿を伝えるJapan-iが世界中の注目を集める日は、そう遠くなさそうです。

非常に限られたスケジュールの中で、絶対条件を守りつつ、最大限の成果を導き出してくれます。しかも、こちらから疑問を投げかけると、単に“できる”、“できない”といった答えが返ってくるだけではなく、必ずベストな解決策や代替案が出てくるのがうれしいですね。
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