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OpenUM プロジェクトの挑戦 Webから行政サービスを変えたい!

2011年1月、Web関連11社が「OpenUMプロジェクト」を立ち上げました。行政制度に関する情報構造の設計をメインに活動するプロジェクトで、NPO団体アスコエが開発した「ユニバーサルメニュー」(自治体間の行政制度の共通性に着目し、誰もが探しやすく、わかりやすい自治体Webサイトを実現するための標準メニュー)を改良・整備し、オープン化していく取り組みです。

ユニバーサルメニューの標準化・オープン化によって何がどう変わっていくのか。8月半ばのOpenUMサイト公開を前に、事務局長・安井秀行氏(アスコエ)と、副事務局長・坂本貴史氏(ネットイヤーグループ)と共に、OpenUMの取り組みについて改めて展望しました。

利用者と制作者の双方にとって情報構造設計に関する体系化が急務

滝澤:発起人でもあるお二人ですが、きっかけは何だったのでしょうか。

安井:まずユニバーサルメニューの背景からお話しすると、これまで私自身が取り組んできた「地域」「コンピュータ」「マーケティング」の3つを柱として地域のために何かしたいと考えたとき、たまたま出来ることがこれだった・・・と。簡単に言うとそういうことなんです。それでアスコエとしてユニバーサルメニューに取り組む中で、特に自治体サイトのカギを握る情報構造設計において、各社が競争し合うだけでなく、共同で社会のために発信する取り組みが必要だと考えるようになりました。そこに、たまたまネットイヤーグループさんとの出会いがあったのです。

坂本:そうですね。いろんな経緯があって自治体サイトについて詳しく調べていくうちに、アスコエさんの取り組みが浮上した、というのが一番のきっかけです。加えて、自治体サイトに限らず、情報構造のデザインパターンをどう整理していくかという自分の中のテーマにかっちりはまったんですね。それで、これを広めることが急務だと考えました。

滝澤:広めるべきだという考えに至った理由は?

坂本:率直に言うと、情報構造設計をできる人が少なすぎるからです。Webの制作過程で設計者や制作者個人の中に蓄積されるものはあっても、新しい人にきちんと継承されなかったりする。そこをどう体系化していくかを考えると、ユニバーサルメニューのように1つの規格として継承していく方がいい。そうすればもっと効率よく設計できるはずです。

あと最近よく思うのですが、Webにあまり関わりのない人たちはWebをソフトウェアとして捉えがちで、そもそも変えられると思っていない。だから使いにくいのに我慢したり、ベンダーの言い分に言い返せなかったりするわけです。でも、Webって実は編集に近いから、どんどん変えられるんですよね。

安井:同感です。さらに、自治体の方々も情報設計の重要性はなんとなく感じているのですが、予算が限られていたり時間がなかったり、IAの専門家と出会うチャンスもありません。一方で提案する企業はといえば、セキュリティやデザインの話はしても、メニューに関しては法律がからむし専門領域だから手が出せないと思っている傾向がありますね。

滝澤:そうした現状を打破するためにも、“誰にでも”という意味で“オープン”が大事なキーワードになってくるわけですよね。

目指すのは、自治体ごとの独自性をアピールし付加価値を生むための仕組み

滝澤:ところで、共同発起人である11社にはどうやってお声がけされたのですか。

坂本:私が勝手に決めたんですが、最終的なゴールを見据えて、CMSとアクセシビリティの2つの領域に強みのある会社を選定しました。

安井:11社の他に、アドバイザーとして株式会社ぎょうせい、三菱総研、時事通信社にも参加していただいていますが、この組み合わせは非常に珍しいと思います。アドバイザー各社は普段サイト構築とは直接関係のない場所で行政に関わっている人たち。国や自治体の実情など、違う視点から積極的に発言してくれるので面白いですね。

滝澤:確かに良い布陣ですよね。今後この取り組みを自治体にどうアピールしていくべきかを考える上でも、3社の視点は貴重です。話を少しOpenUMプロジェクトの活動内容に移すと、単に標準化を目指すだけでなく、それによって自治体ごとの独自性をアピールすることに注力できるという考え方にすごく共感します。

安井:まさにご指摘のとおりです。ユニバーサルメニューというと、なんでも標準化して一緒にすると思われがちですが、そうではありません。これまでは全国一律のものと独自のものとが混在していて、何が独自で何が一般かわからなかった。同じ制度の説明を独自で作っても仕方ないですし、コンテンツを作り出す能力も問われます。それなら、「共通化できる部分は標準メニューを皆で共有して、自治体独自のメニューの方に力をいれられたら」というのが趣旨です。

滝澤:みんなが同じメニュー体系に乗れば、比較もしやすいし、その差異が独自性になっていく。そうやって見える化されれば、行政サービスのメニューもWeb発で見直しがかかるようになるかもしれませんね。

坂本:簡単に言ってしまえば、Webって結局はデータベース。大きい企業であればあるほど、情シス部門がデータベースの構築に必死になっていてWebの担当者は蚊帳の外だったりします。でもそこは本質ではなくて、付加価値でもない。もったいないですよね。だからこそ我々は、“使いやすさとは何なのか”という、もう一段上の話をしなくちゃいけない。そういう意味でも、OpenUMのやろうとしていることは、新しい可能性を見出せる良い視点じゃないかなと思います。

*OpenUMに参加しているWeb関連会社11社(50音順)
株式会社アイ・エム・ジェイ、株式会社アークウェブ、NPO団体アスコエ、株式会社ウェブ・ワークス、株式会社オプト、トランスコスモス株式会社、ネットイヤーグループ株式会社、株式会社フラッツ、株式会社ミツエーリンクス、株式会社メンバーズ、株式会社ロフトワーク

「知れば使える、使えば変わる」の理念で地域や社会を変える革新的な試みに注目

滝澤:プロジェクトとしては、フレームワークづくりの詳細に入ろうしている段階ですが、現段階で見えてきた課題や将来像などはありますか?

安井:課題は大きく2つあります。まず1つは、一過性ではなく、継続的な取り組みにしていくこと。そのためには、事業的な施策があり、きちんと収益がまわる仕組みにしなくてはいけない。もう1つは、どうやって広げていくかです。広げ方としては、自治体の方にどんどん使っていただき、出てきた意見を集約して完成度を高めていく方法と、自治体と関わっている企業に広げていく方法と2つの方向性があると思っています。

坂本:OpenUMが提供するソースを使うことで、自治体サイトだけでなく、民間のサービス企業などは合わせ技での情報提供も可能になります。たとえば、シングルマザー向けの情報検索アプリなんかがあってもいい。こういうものは別に自治体が作らなくてもいいわけで、自治体がOpenUMで公開している情報を新しい形で提供し直せば、それこそいろんな活用方法を見出せますし、我々Web業界も企画力で勝負できます。

ロフトワーク チーフディレクター 滝澤 耕平

滝澤:最後に、お二人のOpenUMへの意気込みをお聞かせください。

安井:最終的には地域や社会を変えていきたいですね。私たちアスコエは、「知れば使える、使えば変わる」と言ってます。つまり、利用者が行政制度を知れば使えるようになるし、使えるようになれば地域や社会が変わっていく。あと、ゆくゆくは海外に向けても発信していきたいですね。法律は違っても、人の生活に関わる行政制度に関しては全世界で共通する考え方が絶対にあるはずです。

坂本:情報構造設計をなんのためにやっているかというと、社会を豊かにするためです。そして、具体的にどう貢献するかというところで私なりに導き出した答えがデザインパターンです。これをクリエイティブコモンズでライセンス提供することによって、いろんな人たちが広く使えるモデルになる。OpenUMはその先駆けになるだろうと思っています。しかも、日本ではほとんど誰も着手していない取り組みですから、歴史に残る革新的な試みと言ってもいいでしょう。

滝澤:標準化を推し進めることによって社会がどう変化していくのか、これからが楽しみですね。現在私のほうでは8月半ばを目標にOpenUMサイトの公開準備を進めています。ここでは、メニュー体系、各メニューのコンテンツ、それを組み込んだサンプルサイトの3つのレベルでユニバーサルメニューを公開する予定です。これを機に、自治体をはじめ多くの関係者にOpenUMの取り組みを知っていただき、その価値に注目いただきたいですね。

*本コラムにおけるコンテンツ(文章、写真)は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス「表示継承の条件」の元、公開しています。

 > CC 表示—継承 許諾条件

お知らせ:OpenUMプロジェクトがWebクリエーション・アウォードにノミネートされました!

◆推薦者様からのコメント

自治体の行政サービス情報を利用者視点で標準化・オープン化。インターネットで市民にとって身近な行政サービスを普及させるのが目標など興味深いプロジェクト。プロジェクトの会議や議論の過程は定期的にWebサイトに公開。広く一般市民もコメントなどで参加できるようにする点も面白い。

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