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Column コラム

あなたのリーンスタートアップがうまくいかない4つの理由と覚えておくべき3つの心得

yuki_takai

クリエイティブ ディレクター
高井 勇輝

「リーン」って具体的にどうやるの?

耳にすることも多くなり、すっかり定着した感もある「リーンスタートアップ」という言葉。関連記事を読んだり話を聞いたりすれば「おっしゃるとおり!」と納得するけれど、いざ自分でやってみようと思うと、何から始めてどうすれば「リーン」になるのかよく分からない。そこで、リーンスタートアップの手法のひとつ、『Validation Board(バリデーションボード)』を使って実際にやってみました。

まさに、百聞百見は一験にしかず。実際にやってみて分かったつまずきやすいポイントや、得られた教訓を、気をつけたいポイント4つと、覚えておくべき3つの心得にまとめてみました。

ポイントその1: 実験仮説の立て方

バリデーションボード」とは、仮説→実験→検証のフィードバックサイクルを繰り返しながら製品の精度を高めていく手法です。最初のステップである実験仮説(Assumption)を適切に立てるところで早速難しいと感じるかもしれません。というのも、「こういうことを課題に感じたことありませんか?」と課題仮説をそのまま投げかけてしまったら、「言われてみればそういうこともまああるかな…」と、幻のニーズに誘導してしまうことになるからです。

それでは「本当に解決すべきニーズなのか」を検証できません。課題仮説そのままを実験仮説にするのではなく、「こういう体験があるなら、課題仮説が正しいと言える」ということを実験仮説にすることが大切です。

ポイントその2: ユーザインタビューの実践

ターゲットとその課題が本当に存在するのか、それを検証する方法のひとつがユーザインタビューです。無意識に答えを誘導してしまわないよう、そしてしっかりユーザの声を引き出すために、ちょっとしたインタビュースキルが必要になります。
まずは、軸となる質問を聞きもらさないためにも、インタビューシートを持参すること。次に、インタビューが終わったらすぐに振り返ってチームで共有できるように、気になったキーワードやコメントなどは随時メモしながら進めることです。
また、あらかじめ用意していた質問項目以外から、いかにユーザの本音や新しい気付きが得られるかも、とても重要なポイントです。思いもよらない言葉から真の課題が見つかることも多いので、なるべく一問一答のぶつ切りのやりとりにならないように、対話形式でキャッチボールしながら、興味深い話をどんどん掘り下げていきます。
そして、1人のインタビューが終わるごとに、都度インタビューのメモをチームで共有して、「ここが気になる」とか「ここはこういう聞き方をした方が引き出せそう」とか、小さなことでもフィードバックして改善していくと、わずかな人数にインタビューする間でもどんどんいいインタビューができるようになっていきます。バッチサイズを小さくして、フィードバックサイクルを早く回すことがリーンスタートアップの肝です。

インタビュー結果の何をもってして「検証」するかは、「直感」でOKです。もちろん、判断基準としてのKPIを定めておくのも大切ですが、それはあくまで判断材料のひとつ。

ユーザインタビューでは定量的な調査は難しいので、「アリ」か「ナシ」かの判断さえつけば良いのです。ある程度判断ができたなら、だらだらインタビューを続けるより、さっさと次のステップに移りましょう。「そんなこと言ってもそんな簡単に判断できるもの?」と思うかもしれないけど、意外に大丈夫です。実際にユーザに対峙して直接声を聞くことは、想像している以上に雄弁に物事を語ります。

ポイントその3: MVPの作り方

MVPとは、「Minimum Viable Product」の略で、「検証に必要な最低限の機能を持った製品」という意味です。つまり、「完璧な企画書を作りこむより、とりあえずでもモノという形にしてみよう」ということ。モノを作り始めるとどうしても「いいモノ」にしたくなってしまう気持ちは分かりますが、大切なのは、「1機能・1プロトタイプ・1検証」に絞り込むこと。欲張らずに、重要な仮説から一つずつ着実に検証していくのがポイントです。
MVPの例としては、Webサービスとして作る前に、単機能のサービスを手動(アナログ)で提供してみてユーザのニーズを確かめるやり方(コンシェルジュ型)もあれば、端的にサービスの特長とビジュアルをまとめてティザーサイトを作り、そこへの反応で検証するやり方もあります。他にも、世界観を表したムービーや、プレスリリース、今ならクラウドファンディングのプロジェクトを立ち上げるのもMVPになり得るかもしれません。
リーンスタートアップの基本は、「ユーザから学びを得て修正する」というサイクルです。ブラッシュアップするためには、一度対象から離れて客観視することが必要なので、そのためにも、プロトタイプという形でアウトプットを一度出して客観視することがとても大切なプロセスなのです。

ポイントその4: 検証実験の設計

MVP(Minimum Viable Product)という形ができると、「さあ、あとはこれを世の中に投げて問うだけだ!」と急ぎたくなる気持ちもやまやまですが、ここでいったんその問い方を考えましょう。

大切なのは、ちゃんと「学びを得られる構造が設計されている」かどうかです。十分な数のデータが集められるのか、集まるデータは検証したいことに合致しているか、次のアクションに移るトリガーは何なのか…。MVPがランディングページやティザーサイトであれば、サイトのアクセス解析から色々なデータを取得することができますが、「データは取ったものの、結局この結果って良いの?悪いの?」とならないように、あらかじめ検証方法を考えておかなくてはいけません。

適切な比較材料や基準となるKPIがなく、判断のつかないような定量データを取るくらいなら、ユーザの声などの定性データから学びや良し悪しの直感を得られるようにした方がいいこともあります。

そして、検証できたら早く次のサイクルに移れるように、その後のアクションへのフローまでセットで考えておくことも忘れずに。

「リーンスタートアップ」は「急がば回れメソッド」

やってみて思ったのは、リーンスタートアップとは「成功」にジャンプできる魔法のショートカットではないということです。最初に僕が漠然と思い描いていたのは、「とにかくさっさと作って、駄目ならさっさとピボットすればいいんでしょ?」というイメージでした。一見近いようにも思えますが、でも正しくは「外せないポイントをちゃんと仮説を立てて考えて、それを検証できるMVPをさっさと作り、駄目なポイントがはっきりしたなら、その学びをもとにさっさとピボットする」ということ。このサイクルを早く回すために、バッチサイズは最小限まで小さくするのです。まどろっこしいからと欲張って一度に複数のことを検証しようとしたり、とりあえず製品を作ってしまおうとすると失敗しがちです。「魔法のショートカット」というより、むしろ、愚直に確かめながら進めるという当たり前のことを一歩ずつ、それをものすごいスピードでやるから早く成功できる、ということなのです。自分の思いつきを過信せずに、確実な一歩を早く積み重ねるというド正攻法を貫くこと、それがリーンスタートアップの本質なのではないでしょうか。
今回の取り組みは実質15回、週一回のペースで3ヶ月間やってみました。ぎゅっと集中して取り組めば、2週間もかけずにここまでのことは充分できます。実際には技術的・権利的なハードルをいくつも超える必要がありますが、少なくともスタートアップを進めるときにはどうすればいいのかが具体的にイメージできたことはとても大な成果でした。

リーンスタートアップ「3つの心得」

これらの体験をもとに、リーンスタートアップを実践するにあたって大切なエッセンスを凝縮して「3つの心得」にまとめてみました。

1.自分の感覚を疑い、ユーザの心の声に従え
2.否定を恐れず、修正回数を誇れ
3.サービスにこだわらず、ビジョンにこだわれ

リーンスタートアップは、「早く成功するために、早く失敗して、早く学びを得る」考え方。早くたくさん失敗して、たくさん学びを得たほうが良い、ということです。つまり、アウトプットの質は「何回修正できたか」が規定するとも考えられます。逆に言えば、最初のアイデアは「失敗する前提」。けれども、実現させようと思ったということは、最初のアイデアにそれなりに「いける!」という手応えを感じているはずです。その思い入れが強ければ強いほど、無意識のうちに否定される恐れのある検証を避け、「幻のニーズ」を誘導して自分のアイデアに「幻の裏打ち」を与えてしまっているかもしれません。誰だって自分の素晴らしいアイデアを否定されるのは怖いと思います。でも、だからこそ、まずは自分自身がドライに「このアイデアは自分だけの思い込みじゃないか?」と疑い、思い込みに隠された本当のニーズを暴こうとする作業が大切なのです。
その結果導き出されたソリューションやビジネスモデルに「これは自分が作りたいものじゃない」と感じてしまったら、それはきっと残念ながら「作りたいものを作りたいだけ」だったのかもしれません。ソリューションの形は最初に思い描いたものと違っても、それが解決したい課題、つまり自分のビジョンに合っているものであったら、きっと最初のアイデアと同じように情熱を傾けられるはずです。
「リーンスタートアップ」とは、それに則れば成功が約束されたマニュアルではなくて、文化やマインドに近いものなんだと思います。逆に言えば、この「心得」さえ忘れずにいれば、きっと、たとえ多少進め方が違ってたとしても、ちゃんと「リーンスタートアップ」ができるはずです。

 

※今回の実践の全スライドはこちらからご覧いただけます。