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Column コラム

産地を守り、使う人を増やす。日本のものづくりの伝え方|MORE THAN プロジェクト 台湾イベントレポート

ジャパンブランドの魅力とは? 台湾で考え、語られた「日本のものづくりの伝え方」

2015年12月12日(土)、台湾の首都・台北市の中でもクリエイティブな企業や人が集う、華山1914文創園区・FabCafe Taipeiにて「MORE THAN PROJECT Talk Event in Taipei」を開催しました。アジア進出をめぐる期待と課題が共有された、トークイベントの様子をお届けします!

FabCafe Taipeiに集まったのは、台湾のメディア、流通関係企業、政府関係者、クリエイターなど約50名。日本のものづくりやブランディング、海外進出の現状についてへの関心の高さが伺えます。

台湾は大事なパートナー。プロジェクトの仲間に。

イベントは、台湾の参加者に向けて、日本語と台湾語の二カ国語で進行しました。冒頭では、ロフトワーク台湾・代表のTim Wongとロフトワーク・伊藤薫から、経済産業省主催で開催しているMORE THAN プロジェクトの狙いや仕組み、活動についてプレゼンテーション。「日本に行ったことがある人は?」と、問いかけると、来場者の約7割が挙手されました。

ロフトワーク台湾・Tim Wong(左)、ロフトワーク・伊藤薫(右)

「わたしたち日本人にとって、台湾の皆さんはとても大事なパートナーだと心から思っています。今日は、皆さんの声を直接伺いながら、願わくば、このプロジェクトのビジネスパートナーや仲間になってほしいと思っています。よろしくお願いいたします」(伊藤)

トークは、MORE THAN プロジェクトの3つのプロジェクトチームがプレゼンテーションするところからスタート。

文化があってこそモノは使われる(播州刃物)

播州刃物プロデューサー・小林 新也さんは、ブランドの3年間に渡るストーリーから最近の成果、抱えている課題等を共有しました。播州刃物は、2015年度のグッドデザイン賞のベスト100と特別賞を受賞。パリ、ロンドン、ニューヨーク、アムステルダムなど、海外での販路開拓に成功しています。

▼Banshu Hamono + TOGIYA + You
http://morethanprj.com/project/4838.html

播州刃物プロデューサー・小林 新也さん

「職人と仕事がしたい」と、生まれ育った播州エリア(兵庫県小野市)で播州刃物プロジェクトに関わるようになった小林さん。伝統の刃物の形は変えず、コミュニケーションツール等のデザインを通じて、産地のイメージアップとクラフトマンシップを丁寧に伝えて行くブランディング活動を開始。さらに活動を拡げようと、海外出展の資金に頭を悩ませていたときに出会ったのが、MORE THAN プロジェクトでした。

プロジェクトのサポートを受け、積極的な海外PRの結果、わずか3年でパリ、ロンドン、ニューヨーク、アムステルダム、フランクフルトなど、世界中の高級店に播州刃物が並ぶように。しかし、成果はそれだけではありません。

「海外イベントに積極的に出るようになってから、お客様と話す機会が増えました。そこで例えば、日本の刃物の『研ぎ』に困っている状況などを耳にするようになりました。本来、ものづくりは、要望に応えることで進化するもの。単純に販路開拓していくだけでなく、お客さんとコミュニケーションをとることでやるべきことが明確になっていったんです。」

そして現在、播州刃物は、「研ぎ」の技術や文化をひろげていくサービスも展開しています。「文化があってこそ、モノは使われる」というのが小林さんの得た確信。

さらに、ブランド化を図った播州刃物は、卸価格の値上げ交渉にも成功し、人材を育てる資金的余裕が生まれ、実際に後継者も生まれました。下請け中心だった産業にとって、とても大きな成果です。

地域のものづくりの価値を可視化し、発信し、事業として拡げて行くことは、地域の文化を支えることだと伝わるセッションでした。

産地を守りながら使う人を増やす(播州そろばん)

続いて、播州そろばんプロデューサー・堀内康広さんによるセッション。播州そろばんでは、そろばん塾やそろばんをつくるワークショップを展開することで魅力を発信しています。同じ地域のものづくりでも、展示会出展中心の播州刃物とは異なるアプローチ。その理由とは?

▼Banshu “SOROBAN” Project
http://morethanprj.com/project/4809.html

播州そろばんプロデューサー・堀内康広さん

「そろばんは、400年前から続いている教育文化。ぼくたちプロデューサーは、海外にでると同時に、国内の職人と産地を守り、産地のことを発信し、そろばん使う人を増やすことがミッションです。」

台湾で「そろばんを使ったことはありますか?」と問いかけると、ほぼすべての来場者が手を挙げました。一方、前月に訪れたベトナムでは、そろばんを知らない人がほとんど。同じアジア圏でも、文化は異なります。播州そろばんでは、そろばんをつくるワークショップだけでなく、計算の道具としてのそろばんの紹介から、その使い方についても、丁寧にレクチャーしています。

「生産者の宮永さんと一緒にベトナムに行ったのですが、本当に時間をかけて現地の子どもにそろばんを教えられるんです。こういう人がいるから文化や産地が守られているんだと感じました。デザイナー、プロデューサーという仕事、メーカーという仕事、それぞれが役割をもって世界にひろげていきたいですね」

色とりどりのパーツをつかって自分だけのそろばんをつくれる

今回のトークイベントと同時期には、台北市内のギャラリー・HaveAnice GALLERY by Fujin Treeで、播州そろばんのワークショップも開催。台湾ではそろばんを使ったことのある人も多く、連日、盛況だったそうです。展開するエリアの丁寧な事前リサーチもポイント。

海外にモノの価値を伝えて行く際には、各地域との文化的違いや共通する資産を見極め、それに見合った届け方をしていく必要があるということを改めて感じられるセッションでした。

伝統工芸にもコーディネートの精神を(WA Mignon)

最後にMORE THAN プロジェクト参加チームからプレゼンテーションをしたのは、WA Mignonの佐藤貴之さん。メイドイン・ジャパンの子ども用品を手がけ、日本流「かわいい」を本来的な文脈で発信しようと挑戦されています。

▼WA mignon Project
http://morethanprj.com/project/4873.html

WA Mignon 代表取締役社長・佐藤貴之さん

WA Mignon(ワ・ミニヨン)の「Wa」は日本を意味する「和」、「mignon」はフランス語で「かわいい」という意味。もともと不動産ファンドのファンドマネージャーとして世界中を行き来していた佐藤さん。その中で、日本の伝統工芸の良さが世界にまだまだ知られていないことを実感し、WA Mignonを起業しました。

マンガや原宿ファッションなど、ポップカルチャー文脈で世界に知られるようになった「KAWAII」という日本語。WA Mignonでは、日本の小さきものを愛でる本来的な「かわいい」感性を発信しようと、高品質の子ども用品を製造しています。広島県福山市のデニム産業とコラボレーションした子ども服など、伝統技術を積極的に取り入れた商品が特徴的です。

「伝統工芸もコラボレーションやコーディネートの精神をもって伝えて行くことが、大事です。ストーリーを細かに知ってもらうことも必要ですが、やはり最初にかわいい!と思って、手にとってもらいたいです」

WA Mignonの伝統技術を使った子ども服

WA Mignonのセッションは、リーマンショック前後の日本におけるビジネスの変化や、海外に伝えていく際のジレンマなど、他プロジェクトとはまた違った視点での日本ビジネスアプローチを紹介する内容でした。

日本各地の伝統工芸・技術を扱いながら、それぞれ伝え方のアプローチが異なる3つのプロジェクト。具体的な実践を来場者に共有したところで、いよいよ台湾市場との接点について考えていくセッションがはじまります。

台湾マーケット進出のスペシャリスト(FUJIN TREE)

今回のスペシャルゲストゲストとして、台湾の有名ディストリビューター・FUJIN TREE GROUP CEOの小路輔さんが登場。日本と台湾でビジネスをしていくポイントについて、お話を伺いました。

FUJIN TREE GROUP CEO・小路 輔

FUJIN TREE GROUPは現在、3つの事業を展開しています。まず、台湾国内での店舗運営事業。カフェ、アパレル、インテリア雑貨、ダイニングレストラン、フラワーショップ、マッサージ店、オイスターバーなど10店舗のハイセンスなショップを展開中です。その他に、日本企業や政府の台湾進出サポート、そして、メディアやスペース運営事業を手がけ、それらを連携することで高い付加価値を生み出しています。

プレゼンテーションでは、蔵前の文房具ブランド「カキモリ」のポップアップ出店で人気を博したり、有田焼の台湾プロモーションを成功させたことを例に上げ、それぞれの伝え方の違いを解説されました。

小路さんは、台湾と日本市場の違いを「台湾ではライフスタイルでの活用シーンを丁寧に、とても具体的に伝える必要がある」といいます。特に有田焼のプロモーションでは、運営しているレストランで、有田焼に台湾の料理をのせて提供する企画が功を奏したのだとか。

台湾と日本の市場をめぐるQ&A

イベントの最後に開催したトークセッションでは、モデレーターからも、参加者からもたくさんの質問が飛びかい、活気ある議論になりました。簡単にご紹介します。

満員の会場から多くの質問が出ました

Q:[播州そろばん] そろばん普及のメリットは?
A:日本の戦後復興は、400年以上前からいわれてきた「よみ・かき・そろばん」の力に支えられていた。これからの子ども達のためも、考える力、集中力、想像力を養うそろばんは重要だ。また、認知症を心配するような高齢者にも効果的だと考えている。(播州そろばん・宮永さん)

Q:[WA Mignon] 高級服へのチャレンジだが需要はある?
A:普段着る衣料はリーズナブルな商品を好む日本人も、知人友人へのギフトには高品質な製品を選ぶ。だから決して富裕層向けのハイエンド商品をつくっているわけではない。台湾でもギフト的にぜひつかってほしい。(WA Mignon・佐藤さん)

Q:[播州刃物] MORE THANに関わってよかったことは?
A:もともと、刃物は下請け産業。職人の名前が刻印されるのではなく、産地のことや職人のことは知られない。この状況は今もあって、否定されるものではないが、播州刃物がやっているのは、今までみえていなかった姿を伝えること。その意味でMORE THAN プロジェクトの発信力が役立っている。あと、MORE THAN プロジェクトのマンスリーレポートは毎月、日本語と英語で公開される。それがきっかけで、全く知らない人とコミュニケーションが生まれるようなきっかけができている。(播州刃物・小林さん)

来場された台湾企業の方やクリエイターも真剣

Q: [FUJIN TREE GROUP] 日本で注目されている台湾の商品は?
A:正直いうと、何も知られていない。ただ日本人の海外旅行先はナンバーワンは、ハワイを抜いて台湾。しかも最近では、台北だけでなく、台南、台中、台東などの地方まで足を運んでいる。その流れにチャンスはある。具体的には、台湾の陶器や木をつかったクラフトワークは日本でもフィットすると思う。(FUNJIN TREE・小路さん)

Q:台湾にもそろばんや刃物の産業があるが、新商品をつくるべきか、古い形のまま新しい人に知ってもらうのとどちらがいい?
A:モノだけでは伝わらないので、使い方を伝えることが重要。例えば、播州そろばんなら、お店にならべるだけじゃ伝わらないけれど、そろばん塾と一緒に教育という文化で伝える事が大事。まずは地元の人たちが自分たちの生活で使うこと、そこから、つくっている人を買い支えることができると良いのでは。(播州そろばん・掘内さん)

Q:[FUJIN TREE]で輸入している日本の商品は台湾にもある産業。現地の商品と競わせることになるのでは?
A:台湾のものと日本のもの、例えば陶器であっても同じ器ではない。両文化の商品を並べることで違いがでて面白いし、新しいコーディネートが生まれる。それは競合することとは違うこと。(FUNJIN TREE・小路さん)

約3時間に渡るトークイベントでしたが、終了後もお客様と出演者の会話は途絶えることなく、大変盛り上がりました。日本への関心にとどまらず、ものをつくり、伝え、届けて行く、これからの産業のあり方について、二つの国をまたいだ議論が交わせたことが非常に有意義だったのではないでしょうか。

お越しいただいた皆様、ありがとうございました!

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