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Column コラム

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satomi_haraguchi

パブリックリレーションズ
原口 さとみ

より本質に近づき、オリジナルであるために

100BANCHのデザインプロジェクトでは、「100BANCH(ひゃくばんち)」というネーミング、サイン計画や100BANCHでなされる活動の設計が主に行われましたが、デザインワークの最初のアクションは「文脈・地脈を探る」だったとか。エリアマネジメントを行う「まちづクリエイティブ」(*5)のクリエイティブディレクターも務める小田さんと、小田さんから今回「編集属性のディレクター」とも呼ばれた寺井が、これから取り組もうとしているデザインについて語ります。

(*5)株式会社まちづクリエイティブ

小田:
渋谷の街って、“偶像”を必要としないんですよ。ハチ公や109、スクランブル交差点があるじゃないかと言われそうですけど、それらが「渋谷」を表しているか?と言われると、ちょっと断片的で違う。さらにこの街は246と明治通りで区切ると、うまくエリアの特徴がマトリクス状に区分けできるんです。センター街や宇田川町はカルチャー・若者文化、表参道方面は商業・ファッション、道玄坂は食やビジネス。では100BANCHのある南街区エリアはどうかというと、ここはまだこれといった色がついていない。偶像を必要としない街のまだ色がないエリアをどう表現するか、というところからリサーチを進めました。

寺井:
最初は名前を決めました。でも、このプロジェクトは母体があるものの新事業でもないし、ステートメントもきちんと決まっていない、本当に0→1のものだった。あるのは、複数社の大勢の関係者の熱い思いです。そういうまだ見えないものに、何という言葉を与えるとどんな文脈が生まれるか。これから人が出入りして何かが生まれる場になることは分かっていたので、名前によって何かを制限することがないように、可能性の幅を広げようと膨大なリファレンスを集めながら、決めつけすぎない瀬戸際の言葉選びをしましたね。

── 定めきれない気持ち悪さ、みたいなものはかなりあったのでは。

寺井:
言ってしまえば……そうですね。でも、デザインリサーチのプロセス(*6)と同じようなことだと思います。
専門家へのインタビューやフィールドリサーチなど様々な調査から沢山のナマの情報を得た後、そこから何が見えるかというインサイトを言語化するプロセス。空欄の答え合わせをするのではなく、自分というフィルターを経て出てくる言葉にはリアリティ・温度感が付随します。ロフトワークのクリエイティブチームには、ここ1-2年でデザインリサーチのメソッドが浸透しつつあるのですが、僕たちはこういった「まだ名前のないものを模索しながら解釈し、新たな言葉を与える」ことをやっているんだと思います。

(*6)デザインリサーチ

小田:
リファレンスの量といったら物凄かったけど、その瀬戸際で色々やりあうなかで感じたのは寺井さんの編集者“的な”ディレクション。編集者ではないのがミソで(笑)、編集者って良くも悪くもその人の色があるけれど寺井さんはそれがなくて、常に全体の構造を見ながらあれこれ合わせていく「ロジックと直感のバランス」にブレがない。

寺井:
そのお題の先にある活動の本質的なところまで入り込めたら、という気持ちがあります。普段、色んな企業や大学のWeb制作をすることも多いんですが、たとえば大学なら、「授業名は『◯◯論 A』でいいの?」「もっとオープンキャンパスはリアリティあるものにできない?」と思うこともあって。冒頭の「頭を挿げ替えても体が変わらなければ意味がない」の話じゃないですが、活動をドライブさせる仕組みづくりの仕事がしたいですね。

── 編集と近い言葉で、小田さんが「設計」という表現でデザインについて話すのをCOMPOUNDのサイトや記事(*7)でよく拝見します。

小田:
発端は、SF映画『ブレードランナー』でのある台詞(*8)に響いたことからなんですけど、設計とデザインは同じだと思っています。デザイナーは自分の文脈をもつべきだ、というのが自論にあって、その話をすると建築っぽいですねと言われることがあります。でも、「設計」に携わる人は大体同じことをやっていると思うんです。時代や土地の文脈と思想を交差させるというか。

そうやっていくと、デザイン・建築といった境界がどんどん曖昧になっていく。僕は、こういう境界をどんどん曖昧にしていきたいんです。そのためにはお金に対する眼差しも必要だし、コミュニティに対してどうコミュニケーションするかも大切で、それらをどうまとめてプロジェクトに絞り上げるかも大事。イギリスにComedy Carpet(*9)という都市づくり・建築・アート・デザイン・文化政策……ひとつのカテゴリに収まりきらないプロジェクトがあるんですよ。こういうのをいつかやりたいと思っています。

(*7)DOTPLACE連載「デザインの魂のゆくえ」
(*8)作中の台詞“I am your designer.”の邦訳がエディションによって「設計者・父・創造主」等異なる表現になっている
(*9)Comedy Carpet


「デザイン」という言葉がもつ意味はあまりに十人十色で、その一色一色がユニークです。正解はなくとも、デザインのプロフェッショナルたちの眼差しを辿って、デザインの先に広がる未来の新しい景色を見たい。 そんな思いで臨んだ今回の対談で見えてきたのは、デザインには文化と文化を対流させ、逆流を生み、新しい文化を生むことができる、ということ。

たとえば、100BANCHのデザインを初めて見た時、初めて空間に足を踏み入れた時、私は確かに「新しさ」を感じました。単なるイマドキ感や未来っぽさといったそれではなく、「何かが始まりそう」な新しさです。
こうした情緒はこれだけ細やかで、挑戦的な「設計」から生まれているものだったとは。
皆さんもぜひ100BANCHで、ふたりが取り組んだ「デザイン」の奥深さを体感してみて下さい。

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