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Column コラム

ロフトワーク展トークセッション

satomi_haraguchi

パブリックリレーションズ
原口 さとみ

ロフトワークは12月18日(月)から22日(金)まで、企画展「ロフトワーク展 01 - Where Does Creativity Come From?」を開催。「偶発的なひらめきを待つのではなく、自ら創造性を生み出すにはどうすればいいのか」という問いに長年向き合ってきたロフトワークが、数多のプロジェクトの“創造性の種”を初めて展示しました。

本記事は、展示の一般公開に先駆けた12月15日のオープニングレセプションにおける、「創造性の源」についてゲストと語り合ったセッションを、前後編に分けてお伝えします。


(■前編「 『なぜそれをつくりたいか?』という問いを考える|ロフトワーク展01-Creators Talk #1」)


後編のゲストは、アーティストの鈴木康広さん。ロフトワーク代表の林千晶を交え、モデレーターには大阪芸術大学アートサイエンス学科のウェブメディア「Bound Baw」の編集長を務める編集者/キュレーターの塚田有那さんを迎えました。

アーティスト/編集者/クリエイティブエージェンシーの目線から見出された、「既にあるものへの見方を変え、創造性を育む方法」に焦点を当てます。

「わかったフリ」が創造力をうばっていく

林:今回の「ロフトワーク展」でのオープニングセッションをやろうと思ったとき、真っ先に「呼びたい!」と思った人が鈴木さんだったんです。
鈴木さんは「気づきの力」がずば抜けていると思っていて。今あるものの見え方の角度をちょっと変えることで、シンプルで強いメッセージに変える創造性がある。作品のなかでも《ファスナーの船》はその典型だと思うんです。

鈴木:《ファスナーの船》は、2002年に飛行機の窓から東京湾を見下ろした時に、あたかも船跡がファスナーを開いているように見えたことがきっかけで生まれましたね。

林:鈴木さんのそういった潜在意識って、どうやって形作られてきたんでしょう。

鈴木康広/アーティスト
1979年静岡県生まれ。2001年東京造形大学デザイン学科卒。日常の見慣れた事象を独自の「見立て」によって捉え直す作品を制作。主な代表作に《まばたきの葉》《ファスナーの船》《空気の人》など。2016年、「ロンドン・デザイン・ビエンナーレ2016」に日本代表として出展。現在、箱根 彫刻の森美術館で個展「鈴木康広 始まりの庭」を開催中。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科准教授、東京大学先端科学技術研究センター中邑研究室客員研究員。2014毎日デザイン賞受賞。作品集に『まばたきとはばたき』、『近所の地球』(青幻舎)、絵本『ぼくのにゃんた』、『りんごとけんだま』(ブロンズ新社)がある。 http://www.mabataki.com/


鈴木:大事なのは「頭の中で修正をかけないこと」だと思うんです。大学生のときからずっと「物体を目にした時は“別のもの”として見る」ことを習慣づけていました。いわゆる「見立て」をするわけです。毎回「別のもの」として見る。

林:私も子どもの頃、雲が綿菓子に見えてた!(笑)。そうか、大抵の人はそこで「わかったふり」をしちゃうけど、鈴木さんはしないよね。

鈴木:大人になると船が「ファスナー」に見えたと思っても、一瞬で頭の中を修正してしまう。「いや、あれはファスナーなんかじゃない、船だ」なんて。それは自ら創造性を閉ざしてしまうことにつながりますよね。

アイデアは“思い出せないくらい”がちょうどいい

塚田有那/編集者、キュレーター
世界のアートサイエンスを伝えるメディア「Bound Baw」編集長。「領域を横断する」をテーマに、編集・執筆のほか、展覧会企画、キュレーションなど様々なプロジェクトに幅広く携わる。2010年、サイエンスと異分野をつなぐプロジェクト「SYNAPSE」を若手研究者と共に始動。12年より、東京エレクトロン「solaé art gallery project」のアートキュレーターを務める。16年よりサウンドアーティストevalaのプロジェクト「See by your ears」のディレクターとして海外展開を推進。編著に『メディア芸術アーカイブス』『インタラクション・デザイン』など、ほか「WIRED」をはじめ編集・執筆歴多数。 http://boundbaw.com/


塚田:鈴木さんのすごいところは、そうやって頭の中にある潜在意識をスケッチで描けることだと思います。私は鈴木さんのスケッチ集『まばたきとはばたき』の中でも、本の帯に原研哉さんが寄せられていた「鈴木のスケッチは、美しい数式のようだ」という言葉が大好きで。

アイデアスケッチは誰もが行えることでも、鈴木さんの場合スケッチそのものが見立ての変換装置になっている。アイデアを書き殴るだけでなく、ときに数式にも見えてしまうようなものを残し続けています。その習慣やルールを課しているのが、鈴木さんにとっての「創造性を生むトレーニング」だと思うんです。

鈴木:まぁ、そこまで厳密なルールではないですが、ノートを開いたときに「以前に何を描いたのか思い出せない」くらいがちょうどいい。スケッチの目的は「記録すること」ではなく、「見返したときに、次の発想につながること」です。ノートに思いついたことの全部を描かずにいれば、完成していないスケッチを見て、前に描いたときの気分を思い出すことができます。その上でさらに「何を描けるか」が大事なんです。

林:記録するだけではなく、スケッチによって毎回見方を変えているということですね。スケッチは言葉にはできないけど、モノの形や手書きの線でしか伝えられないものを効果的に人へ伝えることができますよね。

鈴木:ただ、スケッチを描くことがどこまで成果につながっているかはわからないです。アイデアの実現可能性は後の工程になって初めてわかることなので、「形になること」を考えるよりも「次の発想」につながる自由な空間が、ノート上にあることを楽しんでいます。

人の中にアイデアを残せば、3ヵ月後に実現する?

塚田:アーティストに限らず、ノートや手帳、または脳内にアイデアストックを持つ人は多いですよね。千晶さんにとって、アイデアを覚えておくための何か特別なツールはありますか?

林千晶/ロフトワーク共同創業者、代表取締役
1971年生まれ、アラブ首長国連邦育ち。早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒。花王を経て、2000年にロフトワークを起業。2万人のクリエイターが登録するオンラインコミュニティ「Loftwork.com」、グローバルに展開するデジタルものづくりカフェ「FabCafe」、クリエイティブな学びを加速するプラットフォーム「OpenCU」を運営。 MITメディアラボ 所長補佐(2012年〜)などを務めるほか、2015年4月には森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す官民共同事業体「株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称ヒダクマ)」を岐阜県飛騨市に設立、代表取締役社長に就任。


林:私のアイデアスケッチは、ずばり「他人」です。自分の中にアイデアを留められないから、そのアイデアを他人に話して残すんですね。すると3ヶ月くらいしてから、伝えた人から「千晶さんが前に話していた案ですが、こんな感じでやってみようと思っていて…...」なんて発展させてくれていたりして。

実は、声をかけてもらう頃には私も話したのを忘れていることもあるんですが(笑)、逆に 「自分はそんなことをやりたいって言ってたんだ!」と、新しい自分に気づいて新鮮な気持ちにもなれるんです。

塚田:それをできるのが千晶さんの天才的なところですよね。ほら、参加者のみなさんも頷いてる(笑)。

林:伝言ゲームをしたときに「最初の言葉からいかに変わってしまったか」を楽しむのと一緒で、「アイデアが変化していくプロセスを楽しめるかどうか」が大事だと思うんです。

鈴木:それは理想的ですね。僕はそれをノートに対してやっているんでしょう。スケッチしてもノート自体は考えてくれないけど、次にノートを開いたときの自分は「違う自分」、つまり他人になっているはずなので、その人が見て応えてくれるような。

それから、さっき話した見立てにもつながるんですが、アイデアを記すとき、見えたものに「名前」をつけています。道端にある金属製のポールについてる輪っかを“ポール氏のピアス”と呼んでみたり。あとは“木のバンザイ”とか。

《ポール氏のピアス》

林:面白い! 鈴木さん流のトレーニングですね。今度、そうやって「ものに名前をつけるレッスン」をイベントにしましょう! みんなで街へ出て、“ポール氏のピアス”を探すの。

鈴木:教えられるか、わからないですけど(笑)。

林:大丈夫。それに街を見回せば「小さな発見」を見つけてこられると思う。あらためて年明けにご案内を出すので、ぜひみなさまご参加ください!

塚田:早速、千晶さんがアイデアを他人に残していますね(笑)。今日はお話を聞いていて、創造性は何もないところから生まれるのではなく、日々の中で「気がつく」「発見する」という無意識の習慣から生まれるものだと思いました。みなさま、ご静聴ありがとうございました。


(テキスト:長谷川 賢人奥岡 権人

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