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XPD2014 Autumn - Report Part1 -
  • 14
    11月
  • 有料

レポート掲載中

KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)

XPD2014 Autumn Report Part1

企業が新しい価値を提供していく上で、商品やサービスそのもののだけでなく、体験をどうデザインするかが問われています。ロフトワークは2014年11月14日、ユーザ・エクスペリエンス(UX)とカスタマー・エクスペリエンス(CX)の今について考える「XPD 2014 Autumn」を開催。春の開催(2014年3月12日)に続き、今回もキャンセル待ちが出る人気ぶり。イノベーションの新拠点KOILを会場に、未来のビジネスのヒントを探りました。

人がドリルを買うのは、ドリルであけた穴がほしいから

オープニングスピーチで、「キーワードはエクスペリエンス。今なぜ体験が重要になっているのか?」と切り出したロフトワークの林千晶は、「人がドリルを買うのはドリルがほしいからではない。ほしいのはドリルであけた穴。これはマーケティングの面白さを表現した言葉で、体験を考える上でもカギになる」と説明。

ロフトワーク 代表取締役 林千晶

ブランドマーケティングにおいては、商品やサービスの価値に注視してしまい、「人がなぜそれを買うのか?」という視点を見逃してしまいがちです。たとえばMITメディアラボでは、質の高い授業の内容を惜しげもなくオープンにすることで、より多くの興味を喚起し、結果として志望者が増えるという良い循環が生まれています。一番いいところを隠して集客を狙うのではなく、「何をオープンにして、どこで闘うのか。その戦略のあり方がこれからの企業に問われてくる」と林。

そのためにも、商品やサービスが提供している体験は何なのか?さらに、人びとを動かしている価値観は何なのか?というところまで深堀りする必要があります。「私たちの行動を司っている隠れたニーズ、隠れた価値に近づくためのキーワード。それが“体験”。今日の一日、マーケティングの原点に立ち返りつつ、体験について一緒に考えていきたい」と林は語りました。

この技術は何に使えるか?ではなく、顧客価値は何か?が重要

ソニーコンピュータサイエンス研究所の所長を務める北野宏明氏は、体験を核にしたイノベーションのヒントとして、無人飛行が可能な航空機「Drone」の話題を提供。「重要なのはテクノロジーではない。オートノマス(自律的に)モノが動かせるということ」と強調する北野氏は、Droneの研究例をいくつか紹介していきました。

The RoboCup Federation Founding President, 株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長 所長 北野 宏明氏

たとえば、100台ものDroneがぶつからずに飛んだり、複数のDroneが分解と結合を繰り返しながら飛んだり、建築現場でDroneが作業したり、救急車の代わりにDroneがいち早く駆け付けたり。また、実用化に向けて、道の悪いアフリカではDroneによる宅配ネットワークを作る動きが始動しており、Amazonではより速く確実に商品を届けるために、注文から宅配までをDroneがこなす夢のような構想も進んでいます。いずれもオートノマスにモノを動かせることが、人や社会に新しい価値をもたらそうとしているのです。

Droneの研究例

もちろん、実用化に向けては課題もあります。たとえば、「何百万台ものDroneをリモコンで飛ばしたら、あちこちで衝突が発生するのは必至。人が操縦する限り安全性は確保できないし、たとえ人が操縦しなくても、マネジメントする人のトレーニングや飛ばすためのインフラが必要で、そうなると完全に都市計画の領域になってくる」と北野氏。

もう一つの大きな課題が、犯罪に使われる可能性です。実際にアメリカでは、テロを企てたとして時速600kmで飛ぶDroneが押収されています。また、空飛ぶコンピュータとしてサイバーテロの標的にされる可能性もあります。それでもDroneの活用による経済効果や社会的インパクトは非常に大きいのも事実であり、北野氏は、「これからはDroneのミッションは何か?を考えていく必要がある」と語ります。

北野氏は、「Droneとは何か?答えはまだない」として、「Droneの価値は空を飛ぶモビリティにある。技術はオプションに過ぎない。この技術を何に使えるかではなく、顧客価値は何か?というアプローチが必要。さらにDrone単体を見ていてはダメ。実用化に向けてインフラとして定着するには何が必要かなど、他の領域にも目を向けていかなければならない」と語りました。

サービスデザインはビジネスのオーケストレーション

エクスペリエンスと技術的ポテンシャルをどうやってビジネスにつなげていけばよいのか。慶應義塾大学の武山政直氏は、概念と事例からサービスデザインの可能性に斬り込みました。

慶應義塾大学 経済学部教授, Ph.D Service Design Network Japan Chapter, Co-Representative 武山 政直氏

サービスドミナント・ロジック

武山氏は、「ビジネスに対する発想を価値を生産し顧客に届ける従来のモノドミナント(プロダクト発想)から顧客とともに価値を共創するサービスドミナント(サービス発想)に切り替える必要がある。その上でアウトカムを設定し直し、新しい顧客アウトカム(顧客にとってのゴール)からカスタマージャーニーを検討すると、自分たちがどこに入り込めていないかが明らかになり、新しいビジネスのヒントやイノベーションのチャンスが見つかる」と説明。

実際、一歩先を行く企業は、新しい顧客アウトカム(顧客にとってのゴール)の実現に力を注ぎ、顧客と一緒に価値を創造していると言い、その具体的な手法に迫りました。

プロダクト発想とサービス発想の概念

エクスペリエンスと事業をつなぐサービスデザイン

[戦略]
新しい顧客アウトカムを顧客と一緒に共創していくための戦略には、次の3つがあります。

  • a)顧客のエンパワメント
    顧客にスキルや知識をトランスファーしていくことで、より高いレベルの魅力的なアウトカムを実現する。例)カーナビ
  • b)企業と顧客の役割分担の変更
    顧客の手間を軽減したり、不安を解消したりする。逆に手間がかかっても、参加度を高めることで愛着を感じさせる方法もある。例)カーシェアリング
  • c)異なる顧客の価値共創ネットワーキング
    インターネットに代表されるように2つ以上の顧客アウトカムを、ネットワークを通じて結びつけることによって、Win-Win-Winを作る


[オーケストレーション]
「サービスデザインのプロジェクトは、まさにビジネスのオーケストレーション(統合して調和を図ること)」と武山氏が語るように、a)~c)の戦略をもとにビジネスを作り上げていく上では、さまざまなコンポーネントやファクターを組み合わせて総合的に調和を図るプロセスが必要です。そうすることで、持続可能なサービスとして世の中に浸透していくことになります。

  • 1)サービスを3つの側面で考える
    ・「エクスペリエンス(顧客アウトカムを達成する)」
    ・「デリバリー(サービスを実際に使えるものにする)」
    ・「エコシステム(事業として持続可能なものにする)」
  • 2)それぞれのレベルでオーケストレーションする
    ・エクスペリエンスのオーケストレーション(多様なタッチポイントを調和する)
    ・サービスデリバリーのオーケストレーション(人が触れるフロントステージとシステムなどのバックステージを調和する)
    ・サービスエコシステムのオーケストレーション(多様なプレイヤーとの生態系を作る)
  • 3)全体をオーケストレーションする
    さまざまなファクターを組み合わせて一つの体験価値につなげていく。

さらに武山氏は、サービスデザインの様々な応用事例を紹介しつつ、「日本企業は縦割り型組織でハーモニーが奏でにくい。ここにメスを入れない限りイノベーションは起こらない」と指摘。加えて、顧客やプレイヤーが複雑化し、サービスエンタングルメント(サービスエレメントのモジュール化による相互サービス乗り入れ)の動きが現れるなど、、解決すべき課題は多いものの、「すべては新しいビジネスチャンスと捉えて、サービスデザインでチャレンジしてほしい。そうすれば日本はもっと面白くなる」と締めくくりました。

Event Information:Pepper開発現場にみる、理想のユーザ体験を創るデザインプロセスを学ぶ

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