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ブラザー工業・オカムラも実践した 「今、姿の見えない価値」のみつけ方
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レポート掲載中

loftwork COOOP

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「モノが売れない時代」にモノ(機能価値)からコト(体験価値)の転換が重要視されています。多くの企業が新しい価値の創出に取り組んでいますが、体験価値の創出だけでなく、社会課題への持続的なアプローチなど、求められる価値観が多様化してきています。こうした状況で、どのように企業は「今、姿の見えない価値を見つける」ことに取り組んでいけばいいのでしょうか。

実際に、「デジタル刺繍ミシン」「働き方変革」という新しい価値創造にそれぞれ異なるアプローチで取り組んだブラザー工業、岡村製作所(以下、オカムラ)の事例から、「まだ見ぬ価値」の見つけ方や、プロジェクト設計のポイントを紹介していきます。

「ミシンを売る」から「つくる人をつくる」へ、ブラザー工業の取り組み

「デジタル刺繍ミシン」は、デジタルデータから様々な複雑な刺繍を高速に行うことができるプロフェッショナル向けの製品のことで、ブラザー工業の「PR1000e」は、10種類の糸を一度に刺繍できる画期的なマシン。JPEGやAIなどのデジタルデータをもとに、まるで糸で絵を描くようにスムーズに刺繍が可能です。

デジタル刺繍ミシンの普及により、新たな裁縫表現や価値が生まれ、仕事や人がつくられ、育っていく。そんな未来を実現するため、今回は「描く」ことが好きな人や仕事にしている人たちが、デジタル刺繍ミシンに出会い、モノづくりをするまでのタッチポイントを整理。5つの施策に落とし込み、実施しました。

「未来のつくる人をつくる」取り組みのきっかけ

ロフトワーク FabCafe LLP Fab Director 岩岡

デジタル刺繍ミシン「PR1000e」の「まだ見ぬ価値」の創造は、ブラザー工業から「FabCafeにこのミシンを設置したい」という提案から始まりました。FabCafeは、カフェ空間に、レーザーカッターや3Dプリンター等のデジタルデータを利用したものづくりマシンを設置した「デジタルものづくりカフェ」。本プロジェクト担当者で FabCafe LLP Fab Director の岩岡 孝太郎は次のように振り返ります。

「ブラザー工業さまの提案は、FabCafeに集まる、ものづくりに関心の高いクリエイターに『PR1000e』を使ってもらい、認知を広げたいということでした。しかし、FabCafeではレーザーカッターをはじめとした、いくつものマシンが稼働しており、新しいマシンの導入は、クリエイターにとっては一つの選択肢にしかなりません。むしろ一つ一つのマシンのプレゼンテーションが弱くなってしまうことが危惧されました。そこで、ブラザー工業さま/FabCafeの期待することを改めて整理していきました。」

クリエイターとの積極的な繋がりから、目指すユーザー層を更新

岩岡はさらに続けます。「今回の刺繍ミシンは業務用であり、FabCafeに集まるクリエイター層とは距離がありました。FabCafeのクリエイター層にアプローチするために、クリエイターが一歩ずつ刺繍ミシンに慣れ、刺繍ミシンだからできるクリエイティブを自発的に生み出すようになるまでの数ステップの設計も必要でした。

そこで、ご提案したのが、数名のクリエイターと積極的に繋がることでした。彼らのチャネルとアクション(ワークショップ、作品発表、販売)を通じてクリエイター層に伝播することが期待でき、ひいては、製品ユーザー層の更新つまり、「未来の製品ユーザーをつくる」ことにも繋がるのではないかと考えました。」

こうして、「未来のつくる人」をつくり、育てるプロジェクト『MiY』とのコラボレーションプロジェクトがスタートしました。MiYは「Make it Yourself」の略。FabCafeと、クリエイターコミュニティ「loftwork.com」を活用して立ち上げた、ものづくりコミュニティです。

プロジェクトのコンセプトを、「未来のつくる人づくり」に設定した理由について、岩岡は、「ミシンの購買層は年齢層が高く、キルト展など工芸に関するイベント来場者も60歳以上の高齢層がメインという課題があった」と述べます。そこで、「描く」ことが好きな人や仕事にしている人たちが、デジタル刺繍ミシンに出会い、ものづくりをするまでのタッチポイントを整理、アイデアを以下の5つの施策に落とし込みました。

デジタル刺繍ミシンの新たな用途・アイデアをカタチに

1つ目の施策はデジタル刺繍ミシンの「新たな用途開発」のための「ラボ設立」です。描くことや作ることに才気溢れた、気鋭クリエイター5名と「MiY Lab」を設立。メンバーが「PR1000e」を実際に触り、クリエイターならではの発想で、新たな用途やアイデアを可視化しました。岩岡は、「最初は、イラストを刺繍し、そこで得られた知見、自分たちの創作活動との関連性などを発表するミートアップイベントにつなげていった」と語ります。

「つくっている人」と「つくれるマシン」をマッチング

2つ目の施策は、「MiY Meet up」と題したミートアップイベントです。「MiY Lab」で制作した刺繍作品を披露、ものづくりに興味がある参加者が作品や「PR1000e」に触れることで、創作意欲を喚起。イベントの模様はWeb上にアーカイブし、参加者以外にも認知が拡がる機会も用意しました。

そして、3つ目の施策が、loftwork.com」を通じたデジタル刺繍ミシンを使ったデザイン(作品)の公募です。「loftwork.com」は全国2万5000人が登録しているクリエイターのポートフォリオサイトで、公募には全国から約80作品が集まり、審査の結果、10作品を受賞作品として選出しました。

「見る人」に向けたアワード及び受賞作品の展示と体験ワークショップ

4つ目の施策は、公募で選出された作品を「PR1000e」で作成、FabCafeで展示、販売し、カフェに訪れる人に「自分も作ってみたい」という気持ちを喚起しました。

そして5つ目の施策が、展示期間中にクリエイターと一緒に「つくる楽しみ」体験できるワークショップの開催です。クラフト初体験の方でも参加可能なワークショップを開催しました。

これらの施策の狙いについて、岩岡は「クリエイターにはファンがついています。クリエイターをハブにして、その先のファンに思いを拡散、輪を広げていくことで、『未来のつくる人』のコミュニティが成長していくと考えました」と説明しました。

そして、プロジェクト設計に際しては、実際にプロダクトを触り、「ミシンは何のために、誰のために生まれたか」を徹底的に考えました。そこで明らかになった課題から、アイデアを形にし、外部の人を巻き込んでいきます。

岩岡は、「外部の人に参加してもらうことで、メーカー自身も気づかなかった価値に気づくケースがあります。これが共創(コークリエーション)のメリットです。FabCafeと loftwork.com というリアルとオンラインを組み合わせ、コラボレーションが自然発生的に生まれることが、オープンで取り組むことの醍醐味です」と述べました。

関連リンク

Loftwork.comは、クリエイターのためのco-creation型コミュニティサイトです。グラフィックデザイナー、イラストレーター、建築家、プロダクトデザイナー、クラフト作家、Webデザイナー、写真家、アーティストなどなど…国内外から、さまざまなジャンルでクリエイティブな活動をしている人が集まり、パッケージデザインや、Fabマシンを使ったプロダクト、旅のデザイン、名産品のデザインなど、さまざまなジャンルの共創プロジェクトが生まれています。

FabCafeはクリエイティブなアイデアが集まりカタチとして生まれる「デジタルものづくりカフェ」です。インターネット回線と電源を無料開放し、レーザーカッターや3Dプリンター等のデジタルデータを利用したものづくりマシンを設置するなど、クリエイティブなコ・ワーキングスペースとしても利用可能なスペース&コミュニティです。台北・バルセロナ・バンコクなどグローバルに展開しながら、企業とのさまざまなコラボレーションも生まれています。

「人の働き方はもっと変わるはず」。伝えたい価値を改めて問い直したオカムラ

2社目は、「日本の新しいオフィス文化をつくる会社になろう」というビジョンを掲げ、これからの働き方を考えるWebメディア「WORK MILL」を立ち上げた株式会社岡村製作所の取り組みです。同社は、技術力を生かしたオフィス家具に定評のあるトップメーカーですが、同時に、モノではなくコト、つまり働く「場」のデザインを通じて働き方を変革していきたいと、2015年社内でプロジェクトをスタートさせました。

しかし、「自分たちの思いをうまく言語化、可視化できない」課題を抱えていました。当初の相談内容は、「自分たちの新たな挑戦を世の中に発信するためのWebメディア構築したい」というものでした。

そこで、ロフトワークでは、以下のプロセスに沿ってプロジェクトを設計しました。

(1)発見する:価値発見の探索
(2)組み立てる:骨格の構築
(3)試す:具現化と価値検証

発見する:そもそも「働くとは何だろう」を考えるインサイトを発見

まずは、プロジェクトの背景を探るところからプロセスをスタート、「働くとは何か」を徹底的に考えました。見えてきたのは、インターネットが発達し、テクノロジーが進化しても毎朝同じ時間にオフィスに出勤し、就業時間まで働くなど、人の働き方はもっと変われるし、多様性があってよいという課題意識でした。

オカムラには、オフィス研究所という組織があり、『はたらく場所が人をつなぐ』『オフィスはもっと楽しくなる』といった書籍を出版するなど、働く人と場所について数多くの知見を有していました。

こうした課題や独自価値から、「働く現場を見続けてきた」という新たなインサイトを抽出します。

さらに、オカムラは、2012年にオフィス内に「Sew」(ソウ)というフューチャーワークスタジオを開設するなど、働き方に関する共創の場作りを行ってきました。そこで、様々な職種、働き方に関する異なる意見を持つ人の意見交換、交流のための「場の力」というインサイトが得られました。

また、プロジェクトメンバーには、ワークスタイルのコンサルタントや建築の専門家、人材育成の専門家や空間デザイナーなど、多様なスキルやバックボーンを持った人材が集まりました。こうした「ユニークな人材」というのも、インサイトの一つです。

これらを立体的に展開すべく、当初の相談内容を発展させた「Webとリアルの場での継続的な活動体」というプロジェクトのテーマを提案、2015年の6月からプロジェクトをスタートしました。

組み立てる:「見る」「新しい価値を挽き出す」という意味を持つ「mill」をプロジェクトのキーワードに

具体的なプロジェクトの骨格を組み立てるため、以下のようなプロセスを経て、プロジェクトのコンセプトとVI策定を行いました

  • (1)ビジョンの共有
    (2)ユーザーに伝えるメッセージと価値のアイデアを発散するワークショップ
    (3)ワーク1からブランドコンセプトを定義するディスカッション
    (4)イメージボードを使ってコンセプトアイデアを発散するワークショップ
    (5)ワーク2で抽出したキーワードからビジュアルデザイン案を作成・検討するディスカッション
    (6)コンセプト・VIの決定

ワークショップで抽出されたキーワードは「mill」というキーワードです。これは、「見る:働く場を見守る」「mill(挽く):新しい価値を挽き出す」という2つの意味で、「多様な視点」というイメージをロゴデザインに込めました。

そして、具体的なWebメディアの編集方針やターゲットに関しても「組み立て」のフェーズを続けました。

試す:Webマガジン「WORK MILL」を中核に、立体的な施策を展開

こうしたプロセスに沿って作られたのが「NewWorkerのための参考書」という編集方針のWebマガジン「WORK MILL」です。記事の特徴は、「参考書」という編集方針にそって、図解をふんだんに用いてわかりやすく解説することで、2015年の12月の開設から1年3カ月で54本の記事を制作、公開しました。

「働く現場を見続けてきたオフィス研究所」「場の力」「ユニークな人材」という独自価値を生かした立体的な情報発信を続けた結果、ワークスタイル・ワークプレイスに関するメディア掲載や、問い合わせ増という成果につながっています。

ロフトワーク プロデューサー 柳川

オカムラのプロジェクトを担当したロフトワーク プロデューサーの柳川 雄飛は、「企業に求められる価値観は多様化し、ロフトワークに寄せられる相談内容も、今までにないプロセスで、新しいモノやサービスを生み出したいという相談が増えてきた」と述べます。

自分たちだけで答えを出すのが難しい場合、「発見する」「組み立てる」「試す」のプロセスに外部を巻き込んで取り組むことの重要性が増していきます。

「発見する」は、さらに4つの要素に細分化できます。そもそも何のためのプロジェクトかという「問い立て」、専門家に話を聞いたり、文献なども含めその企業の歴史を調べたりする「探求」、生み出したいインパクトと必然性に関する「価値仮説」、ロゴなどのビジュアル作成やネーミングなど、自分たちはこんなことがしたいという「見える化」の4つです。

また、「組み立てる」も4つの要素に細分化されます。ビジョンを実現するアイデアの「着想」、実現性は一旦脇に置いて考えを発散する「発想転換」、やりたいことをフォーカスする「統合」、そして、いつまでに、誰が、何を、どのようにやるかという「設計」の4つです。

そして、「試す」については、まずは小さくてもいいから動くものを速く形にする「開発・具現化」と、プロトタイプに触れてもらい、フィードバックを得て改善する「検証」の2つです。

これらの3つのステップを何回も繰り返して回していくことで新たな価値は洗練されていきます。

「人」「素材と技術」が集まり、行き交う場づくりを通じた「新たな価値発見」

ロフトワークでは、すでにそこに存在しているかもしれないが定義されていない価値を問い直して、考え、ときには異なる物差しで測り直しながら、クライアントと一緒に見つける活動を続けています。

カフェとものづくりを融合させた場としての「FabCafe」や、素材をテーマにしたコワーキングスペース「MTRL(マテリアル)」、クリエイターネットワークの「loftwork.com」や知の共有「OpenCU」などの取り組みを通じて、「人」があつまり「素材と技術」が行き交う「場」をプラットフォームに、新たな価値発見を支援していきます。

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