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CSS Nite LP, Disk 4 "Web Directions NEXT"

 
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PMBOKで学ぶプロジェクトマネジメント

●PMBOKという知識体系

プロジェクトマネジメントのノウハウを知識体系としてまとめたものが、「PMBOK(ピンボック):Project Management Body of Knowledge」です。世界中のプロジェクトマネージャーの成功体験と失敗体験が統合されています。
PMBOKは、9つの知識エリアに分かれています。統合マネジメント、コミュニケーションマネジメント、スコープマネジメント、リスクマネジメント、タイムマネジメント、調達マネジメント、コストマネジメント、品質マネジメント、人的資源マネジメント──この9つの知識エリアでプロジェクトを管理します。

●「今日からはじめるPMBOK 10ヶ条」

PMBOK自体はシステム開発や建築なども視野に入れた膨大な知識体系ですが、その中からWebディレクションという視点において有効だと思う概念・ルールを10個ピックアップしてきました。

1 活動の基本
PMBOKでは、活動の基本要素を「インプット」「ツールと技法」「アウトプット」の3つのプロセスにわけています。これはプロジェクト・マネジメントだけでなく、私たち普段何かを考えるときに必ず行っているプロセスでもあるのです。自分が持っている情報を、自分の価値観やノウハウで考え、そして企画書にしたり人に伝えたりする。プロジェクト・マネジメントでもこの3つのプロセスを繰り返しながら作業を進行します。

そのため、プロジェクトを進めていて「ちょっと不安だな」と思ったときは、「情報が足りないのか?(インプットの問題)」、「経験とか考え方のノウハウが足りないのか?(ツールと技法の問題)、「情報をきちんとまとめ、関係者で共有していないからいけないのか?(アウトプットの問題)」というふうに、分けて考えることをおすすめします。

2 作業単位の把握と順序
2つめは、スコープマネジメントという知識エリアに関することです。「プロジェクトを通じて提供するものは何か?」を決めることがスコープです。

特に「WBS(Work Breakdown Structure)」という言葉は重要です。ロフトワークでは、日常的に「そのプロジェクトのWBSを見せて」というやりとりがあり、WBSは社内の共通用語になっています。WBSもどこまで詳細化するかは規模や企業によって様々だと思いますが、Webディレクションではスケジュールを作成する際にタスク項目(行うべき作業)に使えるレベルと考えるとわかりやすいと思います。

ただ、WBSの設定にはセンスや経験が問われます。例えば「トップページが決まらないので、下の階層ページがつくれない」という理由で、プロジェクトが遅延するケースがあります。もしこれを「ページデザイン」ではなく、「フォーマットデザイン作成」「主要ページの作成」「量産ページ作成」「トップページ作成」という4つのWBSに分けるとどうなるでしょう?最初にフォーマットデザインと仕様を固め、主要ページをつくる。それから量産ページの作業に移っていく。トップページは、最後の段階まで決まらなくてもかまわない。──スケジュール遅延は防げそうですね。

このようにWBSをセンス良く明確にしておくと、必要な作業が目に見えてくるので、「次はこれをやらないといけない」と、次々作業をこなしていけます。スケジュールをつくるときはWBSを意識して、「作業をどの単位で捉えるか?」をぜひ考えてみてください。

3 ハードロジックとソフトロジック
3つめは、タイムマネジメントという知識エリアに関することです。おもにスケジュール調整やスケジュール管理を行うエリアで、スコープマネジメントと連携しています。

PMBOKでは、複数の作業の依存関係を、強制依存(ハードロジック)、任意依存(ソフトロジック)、そして外部依存という言葉で表現します。家を建てるとき、骨組みをつくらないと、壁はつくれません。前の作業が終わらなければ開始できない作業をハードロジックといいます。

それに対し、骨組みをつくっているときに、窓枠やドアを注文するなど、同時に進めていける作業をソフトロジックといいます。スケジュールを組むときは、この関係を意識することが大切です。何をハードロジックとして設計するか?ここでもWBSと同様にセンスと経験が重要になってきます。

例えばロフトワークでは意図的に主要ページのデザインとコーディング作業はハードロジックで設定します。主要ページのデザインが決まらない段階でコーディング作業を先に進めると、「やっぱりナビゲーション設計を変たい」と要望された場合、コーディングをすべて直すことになってしまいます。

その作業は先行して進めてもいいのか? それとも終わってから進めた方がいいのか? ──Webディレクターとしてのセンスが必要になる部分です。それゆえに適切に設計するとお客様から信頼されますし、「ここまでは早く決めましょう」と、進行をリードしていくことも可能になります。

4 品質は事前に設計する
4つめは、品質マネジメントです。品質は絶対的な基準があるのではなく、スコープとタイムとコストとのバランスで設定されます。たとえば「予算は限られているけど、あれもやりたいし、これもしたいし……」と言うお客様には、今回一番重視したい点を確認しましょう。

もし仕様を重視する場合は、それに必要な時間と予算を伝えます。お客様の要望が「とにかく早く納品してください」という場合は、事前にしっかり品質レベルを共有しておきます。事前に品質を計画して、その実現にはどれくらいの作業と時間と予算が必要になるか伝えておくことが肝心です。

5 シグマでエラーを捉える
5つめも品質に関する話です。品質管理の際に使われる「σ(シグマ)」。1σとか2σはどのような確率をあらわすのでしょうか。σは製造業では一般的な言葉です。生産した製品を、良品と不良品に分類します。この場合、1σというのは68%が納品基準を満たしているということです。できた製品の7割弱が良品で、3割が不良品があるということ。2σは95.5%で、不良品の割合は0.5%です。3σになると99.7%が納品基準を満たしています。4σ、5σと数が増えるほど不良品は減っていきます。

製造業では6σ(シックスシグマ)が基本といわれています。さすがにクリエイティブの領域で6シグマは難しいですが、お伝えしたいのは「数値」で把握することの重要性です。成功しているプロジェクトの数と失敗しているプロジェクトの数を把握していますか?どれくらいの比率で失敗プロジェクトが発生しているのでしょう?一度数えてみましょう、ということです。

ほとんどのプロジェクトが成功しているつもりでいても、実際には7割しか成功していなかったりします。感覚に頼らず、きちん数値にしてみる。それがσでエラーを捉えるということです。

6 コミュニケーションのチャネル数を減らす
6つめは、コミュニケーションマネジメントの知識エリアに関することです。
ステークホルダーが多い場合、コミュニケーションのトラブルが起きやすくなります。それはコミュニケーションのチャネル数が、足し算ではなく掛け算ベースで増加するからです。ロフトワークは、お客様が10人以上いるようなプロジェクトでは「1人の方が窓口となって、レポートでご報告いただけますか」とお願いします。

そうしないと、あるデザインを、Aさんは「いいですね」と言い、Bさんは「文字を大きく」と言い、Cさんは「赤がいい」と言い、「結局何をやればいいのでしょう?」という状態になるからです。それを避けるために、クライアントの中でハブとなる方を設定いただき、意見を集約していただきます。そうすることでコミュニケーションはかなり統制を取ることが可能になるのです。

7 履歴を一元管理
7つめもコミュニケーションに関することです。コミュニケーションの知識エリアで、ロフトワークが重視しているのは履歴を一元管理すること。「変更の指示は、ビジュアルとして全てデータに残していく」という手法を使います。

クリエイターにもお客様にもオンライン上の作業スペースにアクセスしてもらい、作業履歴を共有していく。そうすることで、メールでは埋もれてしまいがちなデータのやり取りや修正指示の履歴が、ログとして記録されていきます。あまり修正が繰り返されたときに、「今度が11回目の修正か…」とお客様にも情状酌量してもらえる効果も期待できます(笑)

Wiki、OpenSource CMS、JIRAなど、いろいろなツールがでているので、試してみて自分の会社に合うものを活用するとよいでしょう。

8 見積りは目的に応じて使い分け
8つめはコストの見積り。見積りは、大きく分けて、超概算見積り、概算見積り、最終見積りという3つのステップがあります。超概算見積りは最初に出す大まかな見積もりです。

この場合、過去の類似プロジェクトから算出することが多く、提示した金額にも比較的大きな誤差が発生する可能性があります。たとえば200万円で見積もっていたら、100万円に減る可能性もあるけど、400万円になる可能性もある、という程度の荒さです。概算見積りは、マイナス25%からプラス50%で、 200万円と見積もったら、150万円から300万円ぐらいの間になります。

最終見積りは、それぞれの作業をしっかりWBSに落としてからボトムアップ形式でつくります。状況に応じて、「これは超概算の見積りですから、金額が変更する幅はこれくらいですよ」という形で、お客様にお伝えするようにします。

9 リスク・調達・人的資源
そして9つめ。ここまで6個の知識エリアを紹介しました。残りは、リスクマネジメント、調達マネジメント、人的資源マネジメントという3つの知識エリアです。これらは今日詳しく紹介する時間がありませんが、エッセンスだけお伝えすると、リスクマネジメントには、最初にしっかりリスクを計算しましょう、というアドバイスが書いてあります。調達マネジメントには、調達プロセスのマネジメント方法が書かれています。人的資源マネジメントには、社内のプロジェクトチームをどう運営していくかについてのアドバイスが書かれています。この3つは、比較的勉強しやすい知識エリアといえます。

10 でもやっぱり一番大切なのはプロジェクトへの愛!
最後にお伝えしておきたいアドバイスは、プロジェクトを成功させるうえで最も大切なのは「いいプロジェクトにしたい!」という愛情だということです。

ベースに愛情があれば、プロジェクトの制約上「ここはこうするしかありません」と提案したとき、お客様は「そうですよね」と同意してくれるのでは?逆にプロジェクトへの愛がなく自分たちの都合だけで要求をつきつけても、お客様は絶対に納得してくれません。PMBOKの9つの知識エリアには含まれていませんが、「一番大切なのはプロジェクトへの愛」を、10ヶ条の最後とさせていただきました。

──以上、プロジェクトマネジメントの基本ということで、お話しさせていただきました。ありがとうございました。

 
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