Home > セミナー・イベント > Web担当者Forum × loftwork  安く!早く!を実現するWebサイト制作の発注マニュアル解説セミナー

Web担当者Forum × loftwork  安く!早く!を実現するWebサイト制作の発注マニュアル解説セミナー

2007年12月に発行された「Web担当者現場のノウハウ」(インプレスR&D)の特集記事「安く!早く!を実現するサイト制作の発注マニュアル」。その反響の高さから、同テーマについてリアルな場でじっくり解説しようと、2008年4月24日、インプレスR&Dとロフトワークのコラボレーションによるセミナーが開催されました。

企業のWeb担当者にとっても制作会社にとっても、“失敗したくない”という思いは共通です。プロジェクトの成否を分けるヒントがたっぷり詰まった3時間。業界を熟知した講師陣によるセッションに、多くの受講者たちが熱心に耳を傾けました。

セッション 1

賢いWebサイト制作発注のポイント

セッション資料  賢いWebサイト制作発注のポイント

前段階での詰めの甘さがリスクを招く

最初に登壇したのは、本セミナーのテーマを生み出した雑誌『Web担当者Forum』の編集長を務める、株式会社インプレスR&Dの安田英久氏です。「賢いWebサイト制作発注のポイント」と題し、発注者によくありがちな間違いを指摘しつつ、発注に至るまでに明らかにしておくべきことについて解説しました。

冒頭で“今日のお題”として安田氏が示したのは、「そのサイトは何のため?」「どんな人に何をしてほしいの?」「何を作ればいいの?」「誰に頼むの?」という4つのポイントです。どれも当たり前のようですが、実は、曖昧なまま進められていることが多いというのです。それぞれのポイントについて、駆け足ながら次のような説明が展開されました。

そのサイトは何のため?

案外多いのが、「とにかくたくさんの人にホームページに来てもらいたい」というケース。制作を請け負う側からすれば、この条件だけでは何を作ればよいのかわかりません。極端な話、人さえ来ればよいのなら、どんなやり方だって出来てしまうのです。しかし、それではビジネス上の目的を達成することにはなりません。企業が何のためにコストをかけるのかといえば、そこにビジネス上のゴールがあるからです。

したがって、売上の増大、利益の向上、見込み顧客の獲得、イメージアップ、既存顧客のサポート、顧客満足度アップ、IR、PR、人材募集など、まずはビジネス上の目的を明確に設定することが重要となります。ただし、とりあえず製品情報を掲載する、伝達するといった曖昧な目的の設定は避けるべきです。

どんな人に何をしてほしいの?

「ビジネス上の目的が裏側の目的で、こちらは表側の目的とも言えるものです。これを定義しないと制作会社は受注しづらいですね」と安田氏。つまり、誰が、どういう理由で(ニーズを持って)、どういう経路でサイトにアクセスし、サイトで何をすればゴールとするか。そして、訪問者がサイトに来る前と来た後で何が変わるのか。また、サイトに来た後で何をするのか(店舗への誘導やブログでの報告など)。これらを明らかにすることです。

万人を満足させられるWebサイトなどあり得ません。だからこそ、もっとも大切な顧客セグメントにフォーカスすべきであるということです。1つのセグメントだけに絞り込むのが難しいようなビジネスであれば、各セグメントに対してフォーカスしたコンテンツ群を作り、ターゲットを振り分けていけばよいのです。ここでは、「ペルソナ」という手法を使って仮想人物を作り、重要な人物像に共通するニーズをあぶり出していくのも有効です。

何を作ればいいの?

ここまで来てようやく、どんなサイトを作ればよいかが見えてきます。思わず商品を購入したくなるようなサイト、カッコいい見た目のサイト、情報を探しやすいサイト、製品の特徴やスペックを理解できるサイトなど、どんな要件を満たす必要があるのかを明らかにしていきます。
「どんな切り口で伝えるの?という点まで含めて考えるとよいでしょう。同じネタでも切り口が違うと別のコンテンツに見えます。」(安田氏)

誰に頼むの?

家を建てるときに自分で設計したり基礎工事したりはしません。また、納屋の雨漏りを直すのにゼネコンに頼む人はいないでしょう。つまり、作り手によって得意分野は違うということです。五万といる制作会社にもそれぞれ得手不得手があり、ビジネス上の目的に合わせて制作会社を選ぶことが大切です。「良い制作会社を紹介してよ」と言うのは、「良いレストランを紹介してよ」と言うのと同じこと。どのニーズを満たす必要があるのかを明確にしなければ、満足のいく結果は得られないのです。

最後に安田氏は、Webサイト制作と発注のいろはの“い”を、次のようにまとめました。
「ペルソナ、訪問者のシナリオ、ビジネス上の目的を設定したら、必ずみんなで共有しましょう。また、目的の達成に向けて数値目標を設定することをおすすめします。」

セッション 2

セッション資料  はじめてのRFP

ツールを有効活用しつつ“三現主義”を徹底すること

続いて、富士通株式会社コーポレートブランド室の担当部長を務める高橋宏祐氏が登壇。35ヵ国にもまたがる富士通グループのWebサイト全体を統括する立場から、「はじめてのRFP-発注時に意思疎通をスムーズにする提案依頼書の作り方」というテーマで、制作現場の経験に基づく説得力あるセッションを展開しました。

まず理解の前提となるRFP(Request For Proposal)について高橋氏は、「職種や前提知識、思惑、スコープ、用語の定義など、ステークホルダー間のギャップを埋めるための一種の共通言語(プロトコル)。普段何気なく使用している電子メールが、SMTPプロトコルという世界共通の言語でやりとりをしているように、相互理解を深め、スムーズなコミュニケーションを実現するためのツールと考えればよいでしょう」と説明。さらに厳密に言えば、口頭発注は契約上違法であり、本来は文書による依頼が必須。体系的なルールに基づいて客観的に仕事を遂行していくためにも重要であると強調しました。

RFPが存在しないことで、最悪の場合は検収不能となったり、そうでなくても、機能不足や品質問題で使えないものが完成したり、仕様変更による手直しやスケジュールの遅延、追加コストの発生につながったりなど、発注側、受注側双方にわだかまりが残るのは好ましくありません。こうした事態を回避するためにも、RFPをベースに関係者間で合意を形成し、プロジェクトを進行する上でのベースラインを確立することで、結果的にプロジェクトの質を高めることにもなるというのです。また、文書化すれば、抜け漏れを防いだり、ノウハウとして共有し、類似プロジェクトに活用したりすることも可能になります。

さらに高橋氏は、RFP提出前後の一連の流れを図示し、RFPは比較的早い段階で作るべきものであると説明。また、RFPの作成は発注側の責任であり、発注側のプロジェクトマネージャが作るべきであるとしました。とはいえ、実際にどう作ればよいのかわからない人も多いはず。そこで高橋氏は、RFPの作成事例として、自社で2007年3月に立ち上げた「富士通キッズサイト」を取り上げ、RFP作成のポイントを紹介しました。

なぜこの事例かといえば、通常の法人向けサイトとはベースラインが異なるため、経験知の少ないサイトを制作するにあたり、いつも以上にRFPが重要な役割を果たしたからに他なりません。「正解がない、プロジェクトのゴールが見えない、ページビューの妥当性もわからない。関係者の理解が薄いため議論も拡散しやすく、毎回“そもそも論”になっていました。こういうプロジェクトこそRFPが有効なのです。見える化することで、共有できるようになります」と高橋氏。RFPのサンプルを提示しながら、網羅すべき次のポイントについて1つ1つ解説しました。

・プロジェクトの名称も疎かにすべきではない(略称まで決めておく)
・目標(大義名分)とゴール(最終的な野望)を明確にし関係者のベクトルを合わせる
・発注金額やスケジュールを左右する受託責任範囲は明確にしておく
 (「一式」といったどうにでも解釈できる表現は使わない)
・公開日など必ずクリアすべき前提条件を記載する
・客観的な基準で評価可能な品質要件を定義する
 (例:自社のWebガイドラインに準拠するなど)
・サポートすべきブラウザやOSの種別やバージョンなどの技術要件も明確にする

重要なのは、とにかく曖昧にしないこと。「曖昧にすることで、いい加減な仕事を呼んでしまいます」と高橋氏は強調します。さらに、RFPを現場で実行するためのツールとして「体制図」を、体制図だけではカバーできない部分を補足するものとして「責任分担図」を紹介。前者は実行するための枠組みを定めたもので、個人のパフォーマンスを最大化するとともに、当事者意識の欠如を防ぐのが狙い。後者は、さらに詳細に個々の業務の責任や範囲をマッピングしたもので、 RACIチャートの活用がおすすめです。これらをRFPとセットで作成することで、プロジェクトを確実に前に進めることができるといいます。

「ただし、・・・」と高橋氏は前置きした上で、「RFPやRACIチャートはツールに過ぎず、これだけではすべての問題は解決しません。大事なのは当事者意識であり、“三現主義”です。常に、現場、現物、現実を見据えて行動すべきであることを忘れないでください」と強調して締めくくりました。

セッション 3

セッション資料  ポイントを押さえて安くする!制作発注の秘密

リスクのない「激安制作」なんて存在しない

実際に制作を請け負う側の代表として登場したのは、ロフトワーク代表取締役の諏訪光洋です。「制作発注の秘密」という謎めいたテーマでセッションをスタート。いきなり、「1000%」という数字を提示し、受講者に問題提起しました。この数字は、制作会社によって制作費に10倍くらいの差が生じてしまうことを表したもので、適正価格の判断の難しさを物語っています。

そもそも元コストが大きく変わらないにもかかわらず、これだけの大きな差が出るのは、主観によって制作の規模が変化し、正確な見積が困難だからです。諏訪は、価格の下ぶれと上ぶれが生まれるのは、制作会社の構造に原因があるとして説明。少なくとも、リスクや品質とトレードオフにならないよう、そこにある付加価値や能力、経歴の違いなどを正しく見極めるための工夫が重要であるとし、さらに次のように付け加えました。

「今日のWebサイトの構築プロジェクトはますます大規模になっていますから、常にプロジェクトの破たんリスクが存在していると考えなければなりません。あくまでも感覚値ですが、150万円未満のプロジェクトなら根性と徹夜で乗り切れても、200万円を超えるプロジェクトから一気にリスクが拡大していきます。また、幸運というものもあります。たまたま制作会社の優秀なスタッフの手が空いていたり、社内のコンセンサスが生まれやすい状況にあったり、仕様変更が発生しなかったりなど、幸運が重なって安価にできた!ということが実際にあり得るのです。この点を認識しておくべきでしょう。」

要は、運に依存するのではなく、失敗リスクの少ない“適正コスト”を見つけるためにも、RFPの作成が有効だということです。精度の高いRFPは、不要な品質を排除し、コストを抑えることにもつながります。だからこそ、まず何が欲しいかを明確にする必要があります。その際、コスト、品質、スケジュールのバランスをどう考えるかも重要です。また、コンペを行う際には、価格だけが一人歩きすることのないよう、より精度の高いRFPが求められます。詳細なRFP がない場合、無理なダンピングをする会社が出てしまい、結果的に安かろう悪かろうでプロジェクトが失敗に終わるケースも少なくありません。諏訪からは、「力のある制作会社が逃げていかないように、コンペは3社程度で行うのがベスト」とのアドバイスもありました。

最後のまとめとして、諏訪は、セッションを通じて伝えたかったキーワードを列挙。ここに、今回のセミナーのテーマにもある“安く!早く!”の実現に向けた、発注者側の心得が凝縮されています。

・200万円を超えるあたりから高いリスクが存在する
・「激安制作」は存在しない
・プロジェクトマネジメントが不可欠
・パートナーシップ(信頼関係)
・品質、コスト、スケジュールのバランス
・体制(ステークホルダー)

このあと、たっぷりと時間をかけての質疑応答が行われ、3名のスピーカーに対し、受講者から数多くの質問が寄せられました。特に、経営陣や経理部門への説得の仕方など、社内のコンセンサスを得るための工夫についての質問が大半を占め、本セミナーのテーマに対する関心の高さに加え、ステークホルダー間での合意形成の難しさが伺えました。

blog comments powered by Disqus

次回セミナーのご案内

社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)

  • 開催日時 : 2011年02月09日(木) 12:30-14:30
  • 場所 : サンシャインシティコンベンションセンターTOKYO 【 地図・行き方
  • 参加費 : 有料 詳細は主催者ページをご確認ください。

スマートフォンの急速な普及とコミュニケーションインフラの変容

お問い合わせ

株式会社ロフトワーク セミナー・イベント担当 : お問い合わせ時間10:00~18:00(土・日・祝祭日を除く)

TEL 03-5459-5123



Copyright© 2000-2012 Loftwork inc. ALL Rights Reserved.