Home > セミナー・イベント > Web担当者Forum × loftwork 安く!早く!を実現するWebサイト制作の発注マニュアル解説セミナー
2008年4月24日に同じタイトルで開催されたセミナーが予想以上に好評を博したことを受け、ロフトワークは2008年7月16日、会場をloftwork Ground(渋谷)に移して同セミナーを再演。講師陣には、Web担当者Forumの安田編集長、富士通Webマスターの高橋氏、ロフトワーク代表取締役の諏訪が顔を揃え、誰もが抱く「安く!早く!」という共通の思いに応えるべく、密度の濃いセッションが展開されました。

セッション資料
賢いWebサイト制作発注のポイント
今回も前回と同じく、企業のWeb活用を支援する情報メディア「Web担当者Forum」の編集長を務める安田英久氏のセッションでスタート。ロフトワークのセミナーではすっかりお馴染みとなった同氏。「“本番”は次のお二人に譲るとして、私からは“発注の前段階”の話を・・・」としつつも、その独特な話術で、冒頭から早くも受講者の心をつかんでいました。
まず安田氏が言及したのは、発注前によくありがちなパターンの問題点。たとえば、いそいそとデザインやコンテンツを決めてから、「ところで、どんな人が見に来るサイトだっけ?」となる。これでは順番が違うのでは?という指摘です。Webサイトを作るからには、そこにはビジネス上の目的があり、リーチすべきターゲットがいるわけで、この部分がごっそり抜けおちたまま完成形をイメージしても意味がありません。
発注前に議論すべきポイントは、「そのサイトは何のため?」「どんな人に何をしてほしいの?」「何を作ればいいの?」「誰に頼むの?」の4つ。それぞれの詳細は前回のレポートをご覧いただくとして、これらを明らかにしていくことで、Webサイトのあるべき姿が初めて見えてくる、というわけです。
中でも、安田氏が最も重要性を強調したのが、一番に議論すべき「そのサイトは何のため?」の部分。すなわち、ビジネス上の目的です。「これがブレると他への影響が大きい」と同氏。また、「どんな人に何をしてほしいの?」の部分では、アンケート調査などから仮想的なユーザー像を作り上げる「ペルソナ」の手法が有効であるとして、簡単にその紹介がされました。
・憶測でしかない漠然としたユーザー像と決別する
・重要なターゲットの考えや行動パターンを具体化する
・関係者間でバラバラな認識をしっかりと共有する
・ユーザーの視点で「したいこと」をあぶり出す
複数の顧客セグメントが存在する場合は、複数のペルソナを作成していけばよいとのこと。こうしてユーザー像が実在する人物に近い形で明確になることで、それぞれのユーザーに求めるアクションを決定していくことができます。このアクションこそが、ユーザーのゴールともなるものです。安田氏は、「商品購入や会員登録、資料請求、セミナーの申し込み、営業への問い合わせ、アンケートの回答など、さまざまなゴールが考えられますが、いずれもビジネス目的に合致したアクションであることが重要です」と説明しました。
最後に「まとめ」として提示されたのは、次のポイントです。
・ビジネス上の目的を明確にしましょう
・訪問者像を明確にしましょう(ペルソナの作成)
・訪問者のシナリオを作りましょう
・目的を実現できるサイトを考えましょう
・そのサイトに合った制作会社を選びましょう
さらに、「Webのことは多少詳しくなくても、ビジネス上の方向性や要件をしっかりまとめてコントロールできる人になりましょう!こういう人は制作会社にも喜ばれますよ」と、貴重なアドバイスもいただきました。

セッション資料
はじめてのRFP
続いて、本題となる「発注マニュアル」について発注側の視点で解説に臨んだのは、富士通株式会社の高橋宏祐氏です。同氏は、富士通グループのWebサイト全体を総括しており、その豊富な業務経験を通じて培ってきたノウハウをもとに、サイト運営者がプロジェクトを成功させるための考え方について語りました。
テーマは「提案依頼書(Request For Proposal:RFP)の作り方」。もちろん、RFPと言われて、「いきなりハードルが高すぎる!」と感じる人もいるはずです。この点に配慮して、高橋氏はまず、「セミナーを受けたからといって、すぐにRFPを作れるようにはなりません。作るための技術を身に付けるというよりは、基礎になる考え方を理解していただきたい」と前置きしました。つまり、RFPの考え方を通じて、「行き当たりばったりでは仕事は続かない」ことを理解して欲しいというのです。
実際、高橋氏のセッションには、「どうすれば仕事(プロジェクト)がうまくいくか」について、重要なヒントがたくさん詰まっていました。これはWeb制作に限らず、すべての仕事にも共通するものです。今回は前回の内容を補足する形で、RFPの作り方を通じて見えてきたポイントを、いくつかピックアップしておきます。
・RFPが共通言語としての役割を果たすように、シンプルに型を決めてやると意外に仕事はうまくいく。
・ルール(仕事のやり方)が存在しないと効率が悪いばかりか、コミュニケーションや品質にも悪影響を及ぼし、結果的に成功は望めない。
・文書にすることで、「見える化」することができる。
・関係者のベクトルを合わせ、“思い”を一つにすること。“思い”がないとよい仕事はできない。
・ゴールには客観的な評価が可能な数値目標を設定する。すぐには到達できないような高い目標でもよい。
・リスクを知るためのマイルストーンとして、絶対に変えられない重要な条件は数値で記述しておく。
さらに高橋氏は、RFPとセットで使いたいものとして、「体制図」と「RACIチャート」(責任分担図)を紹介。「体制図」は、責任の所在を明確にし、業務をスムーズに進めるためのもの。「RACIチャート」は、PMBOKのRAM(責任分担マトリックス)の一種であり、責任分担を明確にするために、組織ブレークダウンストラクチャー(OBS)とワークブレークダウンストラクチャー(WBS)をひも付けたものです。
高橋氏は特に後者にフォーカスし、実務経験を交えながら入念に解説。具体的な実践方法として、社内プロジェクトには「業務に対して人と役割をひも付ける方法(並列型)」、組織横断プロジェクトには「業務に対し組織と人をひも付ける方法(クロス型)」の2つを説明しました。
「責任分担を明確にすることで、当事者意識を醸成することができます。私自身もよく使っています。特に、仕事があやふやになっているなぁと感じたときに有効です。また、RACIチャートにはプロジェクトマネージャの暗黙知を“見える化”するメリットがあります。プロジェクトマネージャにこそ、きちんと作ってほしいですね。」(高橋氏)
もちろん、RFPやRACIチャートを作ればすべての問題が解決するわけではありません。高橋氏はこの点を強調し、「何より当事者意識が大切です。それから目的と手段は違います。この2つを忘れないでください。とにかく、行き当たりばったりではなく、客観的で公明正大なルールに基づいた遂行が重要です」と締めくくりました。

セッション資料
ポイントを押さえて安くする!制作発注の秘密
受講者にとって、発注を受ける側の本音は実に興味深いところでしょう。この部分に切り込んだのが、ロフトワーク代表取締役の諏訪光洋です。
まず、セミナー再演に至った経緯に触れたあと、発注者の関心の高さを裏づける「制作業界の不思議」に言及。そして、前回同様、「1000%」という何やら意味深な数値の提示でスタートしました。この数値は、制作会社によって異なる制作費の開きを示しています。
諏訪は「誰かが暴利をむさぼっているのでは?と思う人もいるかもしれません。でも、ここにはちゃんと理由があります」と語り、上ぶれと下ぶれの理由を次のように示しました。
<下ぶれの理由>
・集約労働(原価はあってないようなもの)
・主観により規模が変化、正確な見積もりが困難
・小規模業者が多い(10名規模の制作会社も多い)
・新規参入が容易
・実績が重視される業界(常に実力より上の実績を積みたいという思い)
・アイドルしやすい生産力(作り置きができないため、安くてもいいから仕事しておこうとする)
<上ぶれの理由>
・失敗リスクの低減
・品質の均一性の保持
・中間会社の提供する価値
(品質の確保、得意分野における付加価値、コンサルティング、リスク保証、結果へのコミットなど)
※上の2つが3割を占め、中間会社が生み出すものが7割。
諏訪は、「こうして見ると、“ダンピングいいじゃん!”と思うかもしれませんが、実はここに落とし穴があります。下ぶれすればするほど、リスクと品質はトレードオフ。こういう制作会社の構造があるのです。必要人月で、しかも想定されるコストを大幅に下回るコストでプロジェクトを成功できたとしたら、たまたま幸運だったと考えるべきでしょう」と語ります。
つまり、実力のある制作会社が提供する価値、中間会社が提供する価値には、それぞれリスクを補完するだけの十分な価値がある、ということです。「ただし、予算を確保せずに中間会社を通してしまうと、かえってリスクが増えてしまうことがあるので注意が必要です」と諏訪。適切なコストの見つけ方として、次のようなアプローチが紹介されました。
SETP0:「できるだけ安く」はリスクとのトレードオフであることを認識する。
STEP1:RFPを作成し、何が欲しいかを明確にする。
STEP2:超概算の予算感を身に付ける(予算の獲得)。
STEP3:候補となる制作会社、中間会社と話し合う。
「予算が足りないなと思ったら、候補の制作会社や中間会社と一緒に、予算内でできる仕様を検討することです。予算内でやります!という制作会社は危険ですね。きちんと話せば、予算内に収める方法は見つかるものです。」(諏訪)
これらの心得を踏まえて、諏訪は「賢い発注の基本編」を提示。
・信頼できそうな2、3社を選ぶ。
・提案書をもらい説明してもらう。
・価格の相談をする。
・比較検討する。
・信頼できるかどうかを判断する。
さらに制作会社ならではの経験から、「コンペを実施する場合には、より正確なRFPの作成をおすすめします。それから、自社の意思決定の特性を伝えておきましょう」とアドバイス。最後に「ぜひ、パートナーを選ぶという視点で制作会社を選んでいただきたい!」と強調しました。
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