Home > セミナー・イベント > 業界を知りベストな発注を実現:Web業界解説セミナー
Webサイトの大型化、Web関連技術の高度化とともに、ますます複雑化するWeb構築プロジェクト。複数の企業が1チームとなってタッグを組み、得意分野における力を効果的に連携させなければ、太刀打ちできないケースも少なくありません。そこで2008年10月2日、ロフトワークはWeb業界における各分野のエキスパートを講師陣に招き、Web構築・開発のトレンドを紹介するセミナーを開催。ビービット、アイレップ、ロフトワークの3社が各々の視点で最新動向やノウハウを紹介しました。
セッション資料
「成果を出す能力」と「プロジェクトを遂行する能力」
まず、今回のセミナーの主催者として、ロフトワーク代表取締役の諏訪光洋が挨拶を兼ねて登壇。後に続くセッションを前に、業界全体を俯瞰し、昨今のWeb構築事情に斬り込みました。
諏訪は、最近ロフトワークが手がけたというプロジェクトを例に挙げつつ、「大規模なプロジェクト、難易度の高いプロジェクトを比較的得意とする当社でも、これは難しいぞ!と思う場面が増えています」と指摘。技術が多様化、高度化していることに加え、Webサイトの規模が拡大傾向にあることも要因の1つ。ページ数もかつてないほど大量になり、SNSなどではデータベースも大きくなっています。また、新しい表現方法やSEO対策、多言語化、紙メディアとの連動など、専門知識も要求されます。
「もはや一軒家ではなく、ビルの建築といった様相を呈しています。プロジェクトの難易度が飛躍的に高まる中で、必要な技術や知識をすべて網羅するなんてとても無理。1社が“すべてお任せください!”というのはあり得ない状況だと言えるでしょう。実際に当社でも、昔は競合だったような会社と一緒にお仕事をするケースが増えています」。
つまり、無理を承知で引き受ければ、プロジェクトの失敗につながるということ。では、プロジェクトの成功には何が必要なのでしょうか。諏訪は、次の2つのキーワードを挙げました。
●成果を出す能力
成果を出すためには、プロジェクトチームに能力者を入れること。Webサイト構築の目的によって必要な能力はさまざまです。目的に合わせて、各分野のエキスパートの力を結集させることです。
●プロジェクトを遂行する能力
Web業界には、依然としてプロジェクトマネジメントが欠如しています。ますます難易度が高まるWeb構築プロジェクトを完遂するためには、適切なマネジメント能力が必要不可欠です。
諏訪は、「ロフトワークは、プロジェクトの遂行能力を大きな特徴とする会社です。ここに、今日お話しをされるビービットやアイレップのような会社の力を組み合わせることで、難しいプロジェクトでも確実に成果を上げることができます」と語り、次のセッションへとバトンタッチしました。

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ユーザー中心設計手法をお勧めする理由
諏訪によるセッションを受けて、「成果を上げるためのアプローチ」に迫ったのは、ユーザビリティに特化したWebコンサルティングを手がける株式会社ビービット代表取締役の遠藤直紀氏です。同氏はまず、自社の成功事例をいくつか紹介しながら、ユーザー本位の発想こそが重要であると強調。
いずれの事例も、思うような成果が出ないという共通の悩みを抱えていたWebサイトです。ユーザー調査の結果からは、「お客様が求めていること、知りたいことと合致していない」という共通の課題も見えてきました。つまり、誰が、どういう状況で、どういう気持ちで、何をしに来ているのかといった分析が欠落したまま、企業側が伝えたい情報を一方的に発信していたのです。
そこで、ユーザーの視点でコミュニケーションのあり方を改めて見直したところ、いずれも実際に売上が向上したり、サービスへの申し込み数が10倍に増えたり、確実に成果を上げることができたといいます。
「インターネットはセルフサービスのチャネル。放っておくと何が起こるかわからないし、提供者の思いどおりにはなりません。しかも、質の時代、個の時代と言われるように、ニーズも多様化しています。インターネット上には口コミ情報があふれており、企業側のメッセージを鵜呑みにする人も少ないでしょう。つまり、ユーザーが主役。選ばれるものを提供し、選ばれる企業になるためには、まずユーザーを理解することが重要です」。
ここで遠藤氏は、成果を生むサイトを構築するための「ユーザー中心設計手法」を紹介。「この手法を使って成果が上がらないことはまずない」と自信を覗かせました。同氏より、重要なポイントとして説明されたのは次の3つです。
●ユーザーターゲティング
ユーザー行動に影響を与える要素を考慮しつつ、誰がもっとも重要な顧客なのかを定義します。ペルソナを設定し、関係者間で共有すると効果的です。
●ユーザーシナリオのデザイン
サイトの目的を達成するまでの、サイト内外におけるユーザーの心理と行動の変遷を考えます。サイトを利用するユーザーの状況、思考パターン、行動の流れに沿うことが重要です。
●意見を聞かないユーザー調査(行動観察によるユーザー調査)
単にユーザーの意見を聞くのではなく、刺激を与えて実際の行動を分析することで、真のニーズをつきつめることができます。ユーザーの視線を追尾するアイトラッキングシステムという便利なツールもあります。
「ユーザビリティとは、単に画面の使いやすさ、わかりやすさを言うのではなく、ユーザーの心理や行動などの分析を踏まえて、戦略的に導き出されたWebサイトのあるべき姿です。調査を繰り返していくと、いろんなことが見えてきます」と遠藤氏。ユーザビリティ向上のアイデアを掲載する「ユーザビリティ実践メモ」や、「ユーザビリティテスト無料体験会」の紹介をもって、同氏はセッションを締めくくりました。
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SEOはWebサイトの成果を上げるためのパーツ
続いて、SEOのスペシャリストとして、株式会社アイレップ専務取締役インターネットマーケティング事業部長の紺野俊介氏が登壇。45分という短いセッションにもかかわらず、検索エンジンマーケティングの最新動向から、効果的なSEOの実践まで、最先端の情報が凝縮されていました。
検索エンジンマーケティングの領域も、めまぐるしい進化を続けています。このことを象徴する動きとして、紺野氏はGoogle、Yahoo!、Overtureの最新ニュースを一気に紹介し、「ここ3~4ヵ月でも、これだけの進化があるわけです。たとえば、GoogleとOvertureの考え方の違いを理解しないと、そもそも広告を掲載することすらかなわなくなりつつあります。新しい情報をきちんとキャッチアップしていくことは必要でしょう」と説明。
また、SEO対策の必要性については、「やっておかないと、もはやユーザーに接触できなくなっている」と指摘。効果的なSEOの実践に必要な要件として次の4つを挙げました。
●サーチの対応状況の確認
SEO業者に依頼する前に、あらかじめベンチマークとなるような情報を収集し、自社の状況を把握。
●ベストプラクティス実践のための社内体制の確立
専門分野でないからと言って丸投げはダメ。業者とコミュニケーションできる体制を整えておくことが大切。
●SEOキャンペーンの実施
どういうレベルで何をしなくてはいけないか、用意すべき資産などを明らかに。
●効果測定、分析、データセット
成果を見極めるために、KPIなどを必ず設定しておくこと。
さらに、SEOの実践に役立つノウハウがたっぷりと紹介されました。実際にどこまで実践できるかが難しいところですが、知っていると知らないとでは、Webサイトの成果に大きな差が生じると考えられます。
●ユーザビリティの観点から
・使いやすいサイトは検索エンジンにとっても扱いやすいサイトと言える。
・ユーザビリティとSEOの両方を理解しておくことは有効である(特定の知識がないことで検索エンジンに評価されない可能性がある)。
・デザイン、ユーザビリティ、ビジネス、SEOのすべてをバランスさせる方法を検討する。
●リンクの観点から
・フッター枠にリンクを並べすぎていないかなど、内部リンクを整理する。
・文脈を持ったリンク(本文中リンク)は永続的な効果が期待できる。
・ユーザーにとって利益のあるWebサイトからリンクを集める。
・費用対効果を考えながらリンク施策を検討する。
●その他
・システムに任せる部分、人によるコンサルテーションに任せる部分を切り分ける。
・ユーザーに確実にリーチするため、必要に応じてセカンドサイトの作成を検討する。
・自助努力だけでは限界があるため、広報やIRとの密な連携も重要となる。
・サイト内検索を活用してユーザーにリーチする機会を拡大する。
最後に、「多くの企業がSEOに躍起になっていますが、SEO自体が目的ではありません。本質的には、Webサイトを構築するプロセスの延長線上にあるパーツでしかないのです」と紺野氏。SEOだけに固執するのではなく、Webサイトの目的を達成するための手段の1つとしてとらえ、プロジェクト全体の中で検討していく必要があるということでしょう。

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PDF:プロジェクトを成功に導くための秘訣
プロジェクトの成功に欠かせない2つの能力のうち、「成果を出す能力」に触れたビービットとアイレップ。残る「プロジェクトを遂行する能力」について語ったのは、ロフトワーク取締役の林千晶です。Webサイト構築プロジェクトにおいて、コミュニケーションや仕事の進め方はどうあるべきか。この点にフォーカスし、プロジェクトマネジメントの重要性に言及しました。
「昨今のWeb事情からすると、何かあったときに、もはや根性や勘だけでクリアできる難易度ではなくなっています。プロジェクトマネジメントは、失敗プロジェクトを生まないところに大きな意義があります。ロフトワークは、もう5年にわたりPMBOKという知識体系をベースにプロジェクトマネジメントを実行しており、プロジェクトの失敗を見える化する仕組みが確立されています」。
PMBOKは、自社で蓄積された経験則とは異なり、世界中の人たちがオープンソース的に積み重ねてきたものです。そもそも、失敗が許されない宇宙開発プロジェクトから生まれており、プロジェクトを成功に導くための科学的な取り組みと言えます。これをベースにすることで、ロフトワークは、数々のWeb構築プロジェクトを成功に導いてきたのです。ここで林は、自社で手がけた成功事例を通じて、実際のマネジメント手法を紹介しました。その成功のポイントは次のとおりです。
・特に複数の人間がコラボレーションする場合は、精度の高いスケジュール管理を実施する。
・個々の作業に対して担当者を明確にする。
・次につながらない作業は意味がないと考える。
・情報を一元管理できるプロジェクトスペースを用意する。
・目的と目標を共有するために「プロジェクト計画書」を作成する。
・徹底して統合的な変更管理を実施する(変更のフローを全員で共有し、変更によるインパクト分析を行い、変更履歴はすべて残す)。
・十分な情報を得てからプロジェクトを開始し、運用までを見据えた設計を行う。
さらに林は、背景の異なる人たちとの連携や、物理的な距離を乗り越えてのコミュニケーション、さまざまなクリエイターを活用したコンテンツ開発にもプロジェクトマネジメントが有効だと語りました。
このように、制作会社のプロジェクトマネジメント能力が問われる一方で、発注側にできることもあります。この点について、林はセッションの最後にこう強調しました。
「RFP(提案依頼書)を書いて、どんなものが欲しいかを明確に伝えましょう。RFPがコミュニケーションの基盤となり、パートナーともズレなくプロジェクトを進めることができます。もう1つ、前提条件を確かめておくことも大切です。制作側が考える作業範囲と発注側の考える作業範囲の間にグレーゾーンが生じると、最も大きなリスクとなります。相手は外国人以上に文化が違うと考えることです」。
プロジェクトの成功率を高めるためには、コミュニケーションや仕事の進め方を見直すこと。これは、制作側だけでなく、発注側にも共通する重要な要件なのです。
PMBOK®でワンランク上のWebディレクションを目指す
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