Home > セミナー・イベント > Web戦略会議 第3回セミナーツール活用から、コンテキスト伝達の時代へ 「BtoC企業の戦略的トリプルメディア活用」
昨今のマーケティングを語る上で欠かせないものと注視されているソーシャルメディアですが、TwitterやFacebookなど急いで新しいツールを導入したものの、それ自体に振り回されているのでは? 本当に大切なことは何なのか? 目先の最新のツールを導入よりも、根本的なコンテクストが求められているとはどういうことなのか。去る6月23日のアシスト×ロフトワーク共催のWeb戦略会議セミナー第3回目では、改めて企業ブランディングについて考察するべく、「ツール活用から、コンテクスト伝達の時代へBtoC企業の戦略的トリプルメディア活用」をテーマに開催されました。
ゲストには長年映画・キャラクタービジネスを展開し、国内外・社内外のコミュニケーションの整備をすすめる東映株式会社様をお迎えして、事例を交えながらお話いただきました、
第一部に登壇した諏訪光洋は、いわゆる「トリプルメディア」とされるペイドメディア・オウンドメディア・アーンドメディアをそれぞれに該当するサイトを提示し、解説したうえで、いま企業担当者が注目するFacebookは果たしてどこに入るものなのかと問います。ページの右側には広告が入るため、アーンドメディアという人もあれば、ユーザーからの声を吸い上げている点ではオウンドメディアとも考えられます。
昨年ディスプレイ広告のクリック率で、Yahoo!を超えたように、Facebookは今後も伸びていくだろうと解説する諏訪は、その理由として、1993年にピーター・サイナー氏によって描かれた犬同士の会話による有名な風刺画を紹介。これはインターネットでは使っているのが人間なのか犬なのかもわからないということを皮肉ったものですが、Facebookはその特性上人間を特定できるため、広告の属性をせばめることができることで注目されています。
また諏訪はFacebookに限らず、ネット広告市場が今後も世界的にも大きくなると予測されている要因について、次のように分析しました。「これまでマス広告はFlow(一連の流れ)だったのに対し、ネットの広告はStock(蓄積)されるものであるという特徴があるからではないかと考えています。ロフトワークが運営するオウンドメディアの例で見ても、アクセス数も問い合わせ数も前年比3割以上のペースで増えています。3~4年前は、サイトからの流入のみでビジネスは成立するといっても信じてもらえませんでしたが、PDCAをきちんと回し、例えば2ヶ月ごとに1.2倍にしていこうと取り組んでいくと、数値は気付かぬうちに確実に蓄積していきます。」
ここで国内外の先進的なオウンドメディアの例を紹介し、ファンやフォロワー数が増えても、「FacebookやTwitterでものすごく利益がでたという会社はない」と指摘。諏訪はPatric Barwise氏の「ソーシャルメディアは顧客理解のツール」という言葉を取り上げました。Patric Barwise氏は販促を第一に考えるのではなく、まだこの取り組みは始まったばかりなのだから戦略を早々に投げ出さないこと。そして、ソーシャルメディアは顧客がどう感じているのかを、そのやりとりから分析するために使うべきだと説いています。
そして諏訪は最後に次のように述べました。「FacebookやTwitterに取り組まなくてはならないと感じている方は多いと思いますが、まずはオウンドメディアをしっかり作ることが重要です。そのうえで、FacebookやTwitterを組み合わせなければ、先んじてソーシャルメディア上での展開を行ったとしても、結局は穴のあいたバケツになってしまい、顧客とのエンゲージメントはなかなか築けないのではないでしょうか」。
◆セッション資料
続いて登壇したのは、株式会社アシスト のれん事業推進室の中田文紀子氏。中田氏は「自分たちのサイトをどうしていったらいいのか」「何から手を付けていったらいいのか」のヒントとして、オウンドメディアをどう考えていくかについて語り始めました。
アシストでは、オウンドメディアとしてコーポレートサイト、採用サイト、そしてCMS製品であるNORENの3サイトを管理・運営しています。中田氏は「サイトの目的とゴールの定義のなかで重要なのは“誰に対してのメッセージなのか”、“ステークホルダーと何がしたいのか”それぞれを明確にすること」と解説。この2つが満たされることでPDCAのサイクルが回り、利益にもつながると説明しました。
しかし、実際の現場に携わる来場者の意見を聞くと、上司が納得するステークホルダーに対するメッセージやサイトのゴールは簡単に決められないケースが多いと言います。
そんなお客様のニーズに応えるために、アシストではコンサルティングサービスである、『Web羅針盤』を例にオウンドメディアのサポートをする際のおおまかな流れを解説しました。『Web羅針盤』が提供するのは、コーポレートサイトや個別サイトの戦略・目標を定め、それを達成するためのガイドライン策定やサイト構造設計の支援です。
大きく分けると5つのステップになる本サービスですが、サイトの目的やゴールを考えることでルールや運営体制もおのずと決まってくるため、最初のステップをどこまで考えられるのかということが非常に重要になってくると指摘。
中田氏は「現状分析をしっかり行い、さまざまな角度からのニーズを吸い上げ、それに応えるための情報を収集するなどを行うことでサイトの目的とゴールを明確にし、Webサイトの評価指標を決めることが重要」と解説しました。ここで中田氏はニーズを吸い上げるコツを紹介。「株主や学生など、様々なステークホルダーが思うところは全く違います。全部のニーズを100%満たすことは絶対にできない」と語り、最後に「まずは普天的な大きなビジネスの目的を作り、オウンドメディアの運営に取り組んでください」とまとめました。
◆セッション資料
最後に登壇したのは、東映株式会社の松本拓也氏です。東映は今年で創業60周年の映画会社です。松本氏は現在の映画制作の体制は映画会社だけで成り立っているわけではないことを説明。東映の大きな屋台骨となっている仮面ライダーや戦隊ヒーローのシリーズの例をとって、複数の企業が一つの作品に関わっていることを説明しました。
松本氏は、「キャラクターというのは4つ目のメディアなのではないか?」といいます。
例えばマクドナルドのハッピーセットやセブンイレブンのスタンプラリーのノベルティに登場することでも、人の目に触れるチャンスがあります。そこで東映が行うことは、どの媒体に登場するキャラクターも「同じもの」であるように、このメディアのクオリティ・コントロールすることで、これが事業ドメインなのだと語りました。
松本氏は東映においてインターネットとキャラクターが一つの転換期を迎えたのは、2006年に行ったオフィシャルサイトの全面改修だと振り返ります。「当時は事業部ごとにさまざまなサイトを立てていて、ビデオ事業部はビデオの話、イベント担当はイベント…と、それぞれがばらばらに更新している状態でした。そこでCMSを導入し、キャラクター毎のタグを設定できるようにしました。これにより別々の部署で更新しても関連記事が表示されるなどの連携が取れるようになり、事業部ごとの縦割りなサイトでありながら、ユーザーに対しては本質的な価値の提供が多方面で可能になりました」
しかし、ソーシャルメディアについては他社に比べると積極的には利用していません。その理由として、「ビジネスのコアターゲットである“幼児・児童”と、ネットユーザーとの乖離」がありました。
松本氏が、映画会社の広報としてできることを考えた末にたどり着いたのは、これまで脈々と受け継がれてきた制作能力あってこそキャラクタービジネスの成功で、その伝統は時代劇から仮面ライダーにも受け継がれています。その礎の上に、東映として何が作れるのか、何がカラーなのかを見つめ直すことだったと語ります。それは60周年ロゴの下に加えられた「“創る”チカラ」という言葉にも込められています。
「ソーシャルメディアについては、プロモーションとブランディングの2つの領域があると考えています。それぞれ似て非なるもので、プロモーションは短期的に利益を追求するもので、ブランディングは長期的に何か新しい価値を創造していくものです。この違いを曖昧にしてしまってはいけない。そして、そのためには、自社サイト=オウンドメディアが重要となってくる」(松本氏)
そして、国内と海外のFacebook上での展開について説明。国内向けでは東映の歴史など読み物コンテンツを充実させ、海外向けには、オフィシャルサイトの代替としてFacebookを利用し、「KYOTO」「SAMURAI」「NINJA」というイメージをアピールし国内外のブランディングに積極的に活用しています。
最後に松本氏は、今後の課題として、東映の中にいる人が東映の作品を観ていないという事実があるということを挙げ、人材の育成にも力を注いでいきたいと語りました。
◆セッション資料
最後に、セミナー登壇者が再び集まり、パネルディスカッションが行われました。
会場には東映と同じく映画会社の担当者も出席し、映画会社のなかで東映が一番上手くWebを活用しているとしたうえで、どうやって関係者を説得したのかという質問があがりました。
松本氏は「奇襲攻撃です」と回答。Webサイトを作るための大きな金額はなかなか出ません。そこで社長が考えているであろう戦略をつきつめて、それにばっちり合っているというストーリーを作ることを心がけたといいます。
これには諏訪も同調し「稟議を通すコツとして、上手に定性データを活用するという話は時々耳にします。Webの世界はとにかく先が読み辛く、ROIはなかなか出せません。とりあえず5年ぐらい走ってみるか、という姿勢が大事なのではないでしょうか」と語ります。
中田氏は「ソーシャルも大切ですが、その受け皿となるオウンドメディアなくしては成り立ちません」と締めくくりました。
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