Home > セミナー・イベント > 売上げの鍵を握る— イノベーション・Webマーケティング
2011年10月26日、日本オラクル株式会社主催、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社、ロフトワーク共催による無料セミナーが開催されました。テーマとなったのは、ビッグデータ時代のWebマーケティング戦略です。トリプルメディアを通じて、これまで以上にWebから大量かつ多様なデータが取得できるようになった現在、企業はこれをどう活用し、ビジネス成果につなげていけばよいのか。各社が事例を交えながら、その成功への道筋に迫りました。
2012年4月にOracle OpenWorld 2012の開催を控える日本オラクル株式会社。そのプロモーションを務める藤野誠一郎氏が主催者代表で登壇。イベントのオフィシャルページと、そこへの誘導を狙いとしたソーシャルメディアへの同社の取り組みが紹介されました。
まず、お客様への公式情報の発信と来場受付を主な役割とするオフィシャルページについて、藤野氏は「2009年は日本でHTML制作を行ったが、今回はグローバルからの指示で、Oracle CMSによる運用管理を進めている」と説明。当初は制約条件が増えてしまうとの不満の声もあったものの、最終的には利点のほうが多いとして、その理由に次のポイントを挙げました。
<CMS活用による利点>
・グローバルコンテンツを活用可能
・Globalの変更にすばやく準拠可能(ブランディングの観点から)
・サイト公開までの時間が短縮
・サイト作成コストの削減
・プロモーション(誘導)に予算を割くことが可能に
一方のソーシャルメディア活用はというと、「社内に他のプロモーションでの成功例があったため、これを説得材料にトライすることに。通常のプロモーションではリーチできない層にアプローチし、最終的により多くのお客様をイベントに動員するのが狙いですが、予算をかけずにプロモーションを実施できるという期待もありました」と藤野氏。
活用にあたっては、ターゲットや具体的なアクティビティを明確化するとともに、KPIを設定し、情報発信の方向性をきちんと定めた上で進行。こうして実現したのが、お客様がFacebook上でCandy&Coというバーチャルな会社の社員になり、さまざまなハプニングを乗り越えて出世していくアプリケーション。これを楽しんでもらうことによって、Facebookを通じてOracle OpenWorldの認知が広がっていくという仕掛けです。
来年4月に向け、まだまだ試行錯誤は続くものの、早くも今回のトライから次の教訓を得たとしています。
1)流行りだからトライするのはNG、目的の明確化が重要
2)お客様とのインタラクションを積極的に実施すべき
3)FacebookとTwitterの特性を認識して適切に活用
最後に藤野氏は、プロモーションの観点からセッションを総括。「オフィシャルページは、CMSを活用することで作業を効率化し、プロモーションコストを捻出します。一方のソーシャルメディアは、やり方次第では低コストで面白いことができる。この2つの組み合わせは、プロモーションにとって非常に有益です」と語り、Oracle OpenWorld 2012の成功に向け、さらなる意欲を覗かせていました。
■セッション資料
続いてのセッションでは、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)の竹森賢司氏が、自社のコーポレートサイトにおけるCMS活用事例を紹介。「コンテンツをいかに効率よく適切に管理するか。これが企業サイトに求められる要素のひとつ」と語る竹森氏は、経営統合により大きな転機となった2006年のリニューアルを振り返りました。
<リニューアルのプロセス>
●現状把握
ビジネススタイルも企業風土も異なる企業同士が1つになったこと、商品やサービスが多岐にわたり全体像が把握できないことなどから、「現状サイトの棚卸」と「組織ごとの徹底的なヒアリング」を実施。
●目的の設定
何のために、誰のために作るのか?を徹底的に議論。
●目的に基づいた方針の設定
チームメンバーの意識統一を図るための軸となる方針を明確化。
●課題の抽出
方針に従い、目的を達成する上で解決すべきコーポレートサイトの課題を整理。「あらゆるソリューション情報を網羅する」「デザイン、レイアウト、コンテンツの要素を揃える」「コンテンツを再利用し、有効活用する」「各部の情報発信をセルフサービス化する」などが課題。
以上のような経緯から、CTCではCMS導入が必須と判断。こうして構築されたサイトは、顧客目線で作ることに徹するため、組織ごとではなく事業グループを横断し、複数の部署でバーチャルな組織を運営しつつコンテンツを管理しているのが特徴です。
「組織の力学、都合などはお客様に関係のないこと。この運用形態が浸透しているからこそ、リニューアル後もクオリティが維持できている。もちろん、円滑なサイト運営を実現するために、ガイドラインの整備、運用事務局の設置といった施策も実施しています」(竹森氏)。
また、リニューアルによって当初の課題がすべて解決できたのも、CMS導入に拠るところが大きいとして、そのポイントを次のように整理。
<CMS導入のポイント>
・CMS導入は、目指すWebサイトを構築する上での「手段」のひとつ。
・CMSは複数のコンテンツオーナーが多量のコンテンツを管理する「サービスツール」として有効。
・運用支援の施策を充実させ、Webサイトのコンセプトやルールをコンテンツオーナーに浸透させることが重要。
さらに、「Webサイトからの認知が行われないとユーザーの選択肢からはずれてしまう!そういう時代が来たのです。これからは“情報の集合体”から脱却し、顧客の意識に深く浸透する“戦略性のあるコンテンツ”が必要です。そのためには、顧客動向を把握するためのデータの管理、分析が行えるサイトが成功のポイントになるでしょう」と竹森氏。CTCでも、顧客の要求の高度化・多様化に対応するべく、データの供給ではなく“共感の提供”を目指して、次期コーポレートサイトの公開準備を進めています。
■セッション資料
ゲストスピーカーとして、ビッグデータをキーワードにこれからのマーケティングのあり方を展望したのは、株式会社アスキー・メディアワークスの中野克平氏です。会場の意表を突いて「クラウド」と「タブレット」の解説でスタートした中野氏は、この2つのイノベーションの組み合わせがさまざまな変化をもたらしていると指摘。中でも最も注目すべき変化が、大量のデジタルデータの出現です。
従来のパソコンの使い方を見ると、アプリケーションの実体がユーザー側にあったのに対し、クラウドではサービスの提供者側にあります。そうなると、ユーザーは入力したデータだけでなく、操作の部分までを見られてしまうことになります。裏を返せば、企業は合法的なやり方で、売上以外のデータをリアルタイムに取得できるようになるわけです。
また、紙を置き換えることでタブレットを持ち出す人が増えれば、現実世界にたくさんのセンサーが付くのと同じことになります。紙では取れなかったような情報が取れるようになり、それこそGoogleにも収集できないような大量のデジタルデータ、すなわちビッグデータが出現。クラウドサービスを提供する側に、そのデータが集まってくるのです。
このクラウド+タブレットが実現する新しい世界を“Smart World”と表現する中野氏は、「クラウドサービスの運営者なら、アプリケーション内の操作を集計して少しずつ改良を重ねていくことができるし、ネットショップなら、コンバージョンに至らなかったケースについても把握できる。そうやってお客様の状況を徹底的に分析し、どんな提案をすれば買ってくれるかを考える。これがビッグデータ時代に必要なビジネスの仕方であり、現にやっている会社もあります」と説明。
つまり、Web解析の方法論を使って現実世界のさまざまな事象を分析できるようになると、よりスマートなやり方でビジネスを成功に導くことができる。もっと言えば、ビッグデータ時代は、チャンスがどこに転がっているかわからないということでしょう。さらに中野氏は、孫子の言葉を借りて「“敵を知り、己を知れば、百戦危うからず”です」と言い切り、自身のセッションで本当に伝えたかったこととして、次の3点を強調しました。
・クラウド+タブレットの組み合わせには、PCの出現と同じか、ビジネス全体を変えてしまうほどのインパクトがある。
・これからはサービス化できない事業はない!と考えるべき。
・大量データを上手に活用してマーケティング活動を行える会社が勝つ。
■セッション資料
最後のセッションでは、ロフトワークのWebマーケティング担当 山口謙之介と代表取締役 諏訪光洋が、Web制作会社の立場から、より実践的なヒントを提供しました。はじめに現場の苦労を知る人間として、自社サイトの運用を通じて蓄積してきたノウハウを山口が紹介。
ロフトワークのコーポレートサイトは、運用を開始して約3年5ヵ月。山口は2008年からサイトに関わり、PDCAの運用を続ける中で、さまざまな改善を試みてきました。その大まかな経緯は次のとおりです。
●2008年~2009年 セッション単位のサイトの改善
改善例1)サービスページのファーストビュー全般を再考 → 施策前後の1ヶ月比較でインバウンド数が166%アップ。
改善例2)モデル価格のバリエーション展開 → 施策前後の3ヶ月比較で平均ページ滞在時間が62%アップ。
●2010年 流入経路の拡大
主な施策はリスティング広告の最適化。社内での運用に限界を感じ、プロにアウトソースすることで、コンバージョンの数やクリック数、獲得単価などが明らかに改善。
●2011年 エンゲージメントへの取り組み
人を軸としたコンテンツの強化。
例1)ユーザー会という形で実施したWebライティング勉強会、CMS学会、アクセス解析研究会などを記事化し、制作会社内部の取り組みを意識的に可視化。
例2)ロフトワーク独自の動きを発信するとともに、ソーシャルでの情報発信のネタづくりも兼ねて、広報部ブログをスタート。
こうした改善を経て、KGIとして設定したインバウンド数とブランドワード流入数、相関関係は定かではないものの売上にも一定の成果が現れています。しかし、「このまま行きたいところだが、そうもいかない。取れるデータはどんどん巧妙化してきており、課題は山積」と山口。
さらに分析データの変化として、「データの見方が、セッション単位から、セグメント単位へ、さらに2012年には個人単位へとシフトしていき、対個人のマーケティング戦略が必要になってくるでしょう」と語り、自らの経験を踏まえつつ、今後の改善に向けたコツを次のようにまとめました。
<改善のコツ>
・情報収集はぬかりなく
・常に仮説を持ってデータを見る
・社内外に協力者(仲間)を持つ
・時には、とりあえずやってみるくらいの気持ちでやる
山口の話を受け、よりマクロな観点からWeb担当者が考えるべきことにフォーカスした諏訪は、キーワードに「エンゲージメント」を掲げ、「多くの企業が、マーケティングの支出の70~90%の予算をリード獲得に投入している。一方消費者はというと、評価や絆の段階に大きな影響を受けるようになってきている。そうなると、すべての顧客の購入までのマーケティングプロセスを再構築しなければならない。そこで鍵になってくるのが“ダイアログ”、すなわち顧客との対話です。その包括的な概念としてエンゲージメントがあります」と説明。
大きな伸びを見せるfacebookやTwitterなどのソーシャルメディアの活用に期待がかかるのも、顔の見えない情報ではなく、人を軸にした対話が重要になってきているからです。ただし、「顧客の声を聞けばいいんでしょ、という姿勢ではダメ。また、リスクを恐れて顧客が出しているたくさんの情報を無視すれば、反感を買うだけです。きちんと対話ができているかどうかは、顧客の心に響く“ありがとうございます”という言葉を言う機会を持っているかどうか。これをエンゲージメントの指標にしてはどうでしょうか」と諏訪。
ここで諏訪は国内外の成功事例を提示しつつ、さらに対話のネタの拾い方にも言及。「リアルなイベントや、研究会、勉強会などの開催を通じて、顧客と一緒に自社の未来を考えていくのもいいでしょう。また、サービスをゲーム化し、顧客との対話をエキサイティングなものにしていく“ゲーミフィケーション”という手法も注目を集めつつあります」(諏訪)。
とはいえ、一朝一夕にはいかないのがWebの世界です。そこで諏訪は、これからのWebサイト運営において考慮すべきポイントを次のように整理し、成功へのヒントとしました。
・継続的にPDCAを回せるプラットフォームの整備
・顧客との関係性の蓄積
・顧客とのオープンで継続的な対話(エンゲージメント)
・ビッグデータ(定性的な情報も含め)を価値につなげられるサービスの活用
■セッション資料(山口)
株式会社ロフトワーク セミナー・イベント担当 : お問い合わせ時間10:00~18:00(土・日・祝祭日を除く)
TEL 03-5459-5123
Copyright© 2000-2012 Loftwork inc. ALL Rights Reserved.